消費税増税の議論は、結局のところ、「小さな政府」と「大きな政府」のどちらが良い? という価値観の問題に帰結するように思います。

「小さな政府」とは、政府の出番をなるべく少なくし、民間にゆだねるのが得策だという思想を指します。

「大きな政府」とは、政府が国民の暮らしに積極的に関与し、リードしてゆくのが好ましいという思想を指します。

日本政府は「小さな政府」に属するのでしょうか? それとも「大きな政府」なのでしょうか?

粗雑な方法ですが、各国のGDPに占める収入(=税金など)と支出(=社会福祉、教育、公共投資、etc.)の占める割合を比較することで、おおよその規模感を掴めると思います。

たとえばイタリアの場合、こうなっています。

イタリア

これで見るとイタリアは政府の収入(青)がGDPの50%を超えており、比較的大きな政府であることがわかります。

フランスも収入、支出ともに50%を超えており、いわゆる「大きな政府」といえます。しかも支出が慢性的に収入を上回っており、不健全です。ただ支出は下向きになっており、この不健全さは是正されつつあります。

フランス

次はドイツです。収入、支出とも40%台の中ごろで、政府が経済全体に占める割合は、他の欧州各国に比べると小さいです。また収入の支出のバランスがきっちり取れていることが目を引きます。

ドイツ

次はイギリスです。収入は30%台の上の方です。つまり比較的「小さな政府」というわけです。リーマンショック後は支出がオーバーシュートしましたが、いまは下向きです。

イギリス

次は米国です。収入は20%台の上の方から30%付近です。つまりイギリスより更に「小さな政府」というわけです。イギリス同様、リーマンショック後に支出のバランスが大きく崩れましたが、いまはそれが急速に元に戻ろうとしています。

米国

最後が日本です。日本は欧州各国に比べると「小さな政府」と言えます。

日本

支出は、じり高を辿っています。また将来も支出は上向きです。これは先進国の中で日本だけに見られる特徴です。高齢化がその一因なのかも知れません。一方、収入も急いで増やしていることが見て取れます。これはつまり増税です。それでも収入と支出の間の乖離は、各国の中でいちばん大きく、不健全です。

これは喩えて言えばクレジットカードで借金してモノを買っている状態です。毎月のお給料では本来できないはずの贅沢な暮らしを、国債を発行することで維持しているわけです。

もちろん、一時的に出費が嵩むことがあるので、借金が絶対にイケナイということではないと思うんです。

でもそれが常習化すると(ちょっとヤバいよね?)という不安が頭をよぎります。

日本の場合、国債を出すことで帳尻を合わせる、いわば「クレカ廃人」みたいなライフスタイルが常態化しています。

政府負債

上の政府負債がGDPに占める割合のグラフは、ネット・ベースです。その意味は、国が出した国債を、政府系の金融機関や基金が買っている場合、お金の借り手であると同時に出し手でもあるので、その分は相殺してあるということです。このように差し引いた後でも日本の負債比率はGDPの140%に迫る勢いです。

上のグラフで、米国、ギリシャ、ドイツは、政府の借金が既にピークアウトしている点に注目して下さい。これと対照的にフランスと日本はダメです。

次に財政赤字を見ると米国は2009年頃は日本より悪かったけれど、今は急改善しています。ギリシャですら、今では日本より財政赤字は小さいです。

財政赤字

日本はサクサクと国債の借り換えをしなければいけない体質になっています。それはいまのところ問題なく出来ています。

借入必要額

つまり「小さな政府」と「大きな政府」の問題は、国民が「これは政府の仕事だ」とか「これは政府の仕事じゃない」ということに関して、日頃からどう感じているか? という問題だと言い直せると思います。

たとえば「お年寄りの面倒をみるのは、当然、国の仕事だ」という価値観は、「大きな政府」の考え方というわけです。

そういう価値観や美意識の問題とは別に、「じゃあそれが財政的に可能なわけ?」という台所事情の問題があります。

そして身の丈以上の「大きな政府」を維持し続けるためには、市場という気まぐれで頼りにならないプレイボーイに、我々の運命をゆだねていることに他ならないのです。