こんにちのアメリカやイギリスでは、一握りの裕福層が国全体の所得のかなりの部分を独り占めしてしまい、それがちょうど第二次世界大戦前の頃のような、きわめて不平等な社会を作り出しているという指摘があります。

まずそれをデータで確認しておきたいと思います。

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トップ1%が占める割合は、アメリカの場合、ほぼローリング・トウェンティーズと呼ばれた、『グレート・ギャツビー』に描かれた金ピカ時代の水準に戻っています。

イギリスはアメリカほどではないけれど、トップ1%の所得シェアが、13%まで上がってきています。

日本の場合、太平洋戦争前はアメリカやイギリスに遜色ない格差社会でした。

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(出典:ウィキペディア)

しかし戦争を通じて皆が貧しくなったこと、裕福層を狙い撃ちした預金封鎖でGHQが一気に格差是正を敢行した事などを通じて比較的平等な社会になっており、それはこんにちも受け継がれています。

ところで第二次世界大戦後、一時は縮まった所得格差が、なぜまた拡大してしまったのか? という点については、マーガレット・サッチャーロナルド・レーガンの登場が大きく関係しています。この二人は保守主義を唱え、福祉国家を解体することで経済の活力を取り戻すという価値観を打ち出しました。

市場の潜在力を最大限に引き出すことで成長を取り戻すというアプローチは、アベノミクスとも一部重なる部分があると思います。

英国の最高税率は第二次世界大戦終了後からサッチャーが登場するまで平均すると90%以上でした。これは平等な社会の実現にはある程度貢献したかも知れないけれど、それが幸せな時代だったか? と言えば、イギリスの歴史の中で最もひもじく、屈辱的な時代でもありました。

TVドラマ『ダウントン・アビー』に描かれている第一次大戦前夜の英国社会では裕福層になれるかどうかの決定要因は上流社会に生まれたか? ということでした。つまり世襲制です。

こんにちのアメリカの裕福層の少なからぬ部分は、アップル・コンピュータのスティーブ・ジョブズやフェイスブックのマーク・ザッカーバーグに代表されるような、アントレプレナーです。

もちろん、そもそも裕福な家に生まれて、親から引き継いだ信託口座で楽な暮らしをしているボンボンというのも居ますけど、彼らは意外なほどのスピードで親から相続した遺産を散財してしまいます。

僕の住んでいるカリフォルニア州マリン郡は、そういうリッチ層がとても多い土地柄で、さまざまな裕福層向けのビジネスやサービスが繁盛しているのだけれど、「トラスト・アカウント・キッズ」たちに対して、世間は冷笑的です。

『プライドと偏見』の時代には、そもそも貴族が医者や弁護士などの仕事に就くということ自体が卑しい行為でした。

しかし現在では自ら事業をやって一山当てることはむしろ王道であり、次々に登場する新しい成功者の参入によって裕福層の顔ぶれは、ガラガラめまぐるしく変わっています。

そのへんの微妙な違いをすっ飛ばして、「ジェーン・オースチンの時代に逆戻りしている」と主張するのは少し議論が乱暴だと思います。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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