今日(2月16日)、欧州蔵相会議の開催が予定されています。その場でギリシャに対するトロイカの支援に関し、最終的な結論が出される見込みです。言わば「D-Day」というわけ。

交渉決裂→グリグジット(GreExit=つまりギリシャのユーロ圏脱退)というシナリオを唱える人もいますけど、僕はその可能性は比較的低いと思っています。

その理由として、ドイツにとってEUの存在が、とてもプラスに働いてきたということを先ず指摘出来ます。

ドイツの失業率は、東西ドイツ統合以来、過去最低水準です。次に去年のドイツの輸出額は、過去最高でした。先日発表された2014年第4四半期のGDPは+0.7%と、市場予想の2倍近いポジティブ・サプライズでした。

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つまりドイツの輸出を牽引車として、ヨーロッパ全体が今般の不況からなんとか脱出するという打開策は、未だ成功の可能性をじゅうぶんに残しているということです。

ドイツは先進国の中では経済に占める輸出比率が高い(45.6%)です。

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だからユーロのような「大きくて、フニャフニャした弱い通貨」の使用は、大歓迎なのです。もっと踏み込んだ言い方をすれば、ユーロ圏というダメな経済圏の盟主として「コノ、コノ、コノーッ!」とサド侯爵的にムチを打ち込む役回りは、ドイツにとってこの上ない快感な立場だということ。

この淫靡ないちびりの対象であるギリシャを、ユーロ圏という座敷牢につなぎ止めておくためのコストは、下に見るように、僅かです。

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ギリシャは、既に向こう10年間利払を免除されています。元本も返済してません。つまりギリシャの側からしても全くのフリー・マネーに近いお金を使わせてもらっているわけです。これはファイナンスの世界で言う「フロート」の概念に近いです。


ギリシャに対する融資のお金の大半は、実はEFS債で調達されているので、ドイツがカネを貸しているというより、これは元を正せばわれわれ一般投資家のカネです。つまりドイツのハラは全然痛んでいないということ。

若しギリシャがユーロ圏を脱退すると、スペインやフランスでも極左、極右勢力が伸長している折、ドミノ的にユーロ圏がガタガタになるリスクがあります。ドイツは、そんな展開を望んでいません。

さらに言えば、英国では5月に議会選挙があり、キャメロン首相はそれに絡めて英国のEU脱退の国民投票(=もともと2017年に予定)を繰り上げ実施しては? というアドバルーンを上げています。つまり(この際、ユーロ圏という共同体の存在意義そのものを、問うてやろう!)という意地悪な遊戯なわけです。これはドイツにとっては許せない裏切り行為です。

昔からドイツとイギリスはヨーロッパ全体に対して号令する立場を競ってきました。いまここでギリシャに出て行かれるとイギリスは得意満面で「それ、オレの言った通りだろ?」と冷笑するに決まっています。これはドイツにとって何よりも嫌な展開です。

ドイツは、2回の世界大戦を経て、いずれの場合も、それを仕掛けた「悪者の国」という立場で世界から糾弾され、そういう展開は、もうこりごりだと思っています。

しかしドイツの生産力は国内市場の規模より遙かに大きいので、国外の市場へのアクセスは不況防止と雇用維持のために絶対に必要なことです。それを昔の民族国家の枠組みの中で実現しようとすると、市場へのアクセスを求めて海外侵略……みたいな剣呑なやり方になってしまうわけです。

それが、そもそもEUが出来た理由です。(下にそのへんの経緯を説明するリンクを貼っておきます)

つまりドイツにとっても、ギリシャにとっても、GreExitのメリットは、皆無に近いというわけ。



ドイツの奇跡の復興とEUのおいたち(1/4)

ドイツの奇跡の復興とEUのおいたち(2/4)

ドイツの奇跡の復興とEUのおいたち(3/4)

ドイツの奇跡の復興とEUのおいたち(4/4)

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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