先日のニューヨーク・タイムズに、かつては高い貯蓄率を誇った日本の家計部門が、貯蓄ゼロ時代に向かっている現状に関する記事が掲載されました。

その記事によると現在の日本の家計部門の貯蓄率はマイナスであり、一方、かつては「遊んでばかりいて、身の丈以上の消費をするクセがある」と揶揄されたアメリカは5.5%という結果になっているそうです。

その記事を読んで(何を、コノヤロ!)と思ったので、実際にOECDのデータで調べてみたら、やっぱり日本は主要国でいちばん低い水準でした。

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ニューヨーク・タイムズの記事の話に戻ると、アベノミクスでは庶民にもっとおカネを使ってもらうことで経済の活性化を図ることを目指しているけれど、長期に渡る賃金の伸び悩みで、庶民は将来のための蓄えを取り崩すことでなんとか辻褄を合わせてきたので、この試みは成功するかどうかわからないとしています。

「貯蓄ゼロ世代」が急増しており、未婚の成人の40%が貯金ゼロなのだそうです。これは10年前より10パーセンテージ・ポイント高いです。

ニューヨーク・タイムズは、「貯蓄ゼロ世代」の増加は雇用形態の変化と同時進行していると指摘しています。

アベノミクスで、ながいこと聞かれなかった懐かしい言葉、「ベア」が再び新聞の見出しを飾るようになりました。「ベア」とはベース・アップを短縮した言葉で、基本給UPを指します。

しかしニューヨーク・タイムズは、ベアはあくまでも正社員だけにカンケーのある話で、労働組合に入っていない、派遣社員やアルバイトにとっては、無縁な話だと指摘しています。このような非正規の雇用形態が雇用全体に占める割合はどんどん増えており、彼らは「年2回のボーナス」とか「退職金」のような、貯蓄を進める上でカギになるチャンスから全く疎外されているわけです。

貯蓄を奨励するような政策の殆どは取り払われ、団塊の世代がリタイアメントの年齢に入るにしたがって、過去の貯蓄の取り崩しのペースは一層加速しています。

もちろん、国全体としては貯金が無くなってしまったわけではありません。過去に貯蓄した人たちの貯金は未だ残っているし、家計部門を離れ、企業の現預金を見ると、企業は昔とちがってどんどんキャッシュを貯め込んでいます。だから国全体のトータルで見れば、日本の貯蓄は世界の平均と比べても遜色ない水準です。

問題は、貯蓄は偏在しており、それは多くの庶民の手元には無く、「年金に期待するしかない」とか「会社に、少しでも長く居させてもらえるよう祈るしかない」という他者の慈悲にすがる構図になっているという点です。

(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack

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