安倍首相の訪米を前にアメリカの投資家が突然、環太平洋経済連携協定(TPP)に注目し始めています。

ウォール街は北米自由貿易協定(NAFTA)で儲かった成功体験を持っています。

NAFTAの交渉は1992年のサンアントニオ会議でカナダ、アメリカ、メキシコの三国が基本合意に調印しました。その後、1993年に米国議会がこれを承認し、クリントン大統領が12月に調印、協定は1994年1月から発効しました。

このサンアントニオ会議からNAFTAの発効までの間にメキシコ株式市場にアメリカの投資資金が殺到し、+51%上昇しました。

メキシコは新興国であり日本は先進国ですので、NAFTAとTPPの条件は大いに異なります

それにもかかわらずTPPの合意がアメリカからの日本株買いを促進するかもしれないのは、折から日本が推進しているアベノミクスとの兼ね合いがあるからです。異次元緩和と財政出動という第1、第2の矢は既に実行にうつされているわけですが、第3の矢である構造改革について投資コミュニティは懐疑的に見ています。

(たぶん、何もかわらないだろうな……)

という冷ややかな態度です。

しかし日本がTPPに合意するとなると(えっ、本気だすの?)というサプライズが生じ、アメリカ人が日本を見る目が変わると思われます。

TPPでは関税の撤廃もしくは関税率の引き下げ、サプライチェインの強化、環境保全、薬品パテント、国有企業の活動の制限、デジタルならびにグリーン・テクノロジーの投資強化など、数多くの事柄が含まれます。

なかでも知的所有権の保護はアメリカや日本などの既に高付加価値経済に移行済みの国々では比較的取り組みやすいテーマですが、新興国の多くにとってはハードルが高いです。

アップルのMacBookを裏返すと「Designed in California, assembled in China」と書いてありますが、意匠設計という最も付加価値の高い部分、言い換えれば「いいとこ取り」する経済モデルを標榜するならば、知的所有権問題は避けて通ることは出来ないのです。

なお、TPPに対しては日本でも反対意見が多いと思います。アメリカも同じです。米国の砂糖、テキスタイル、運動靴、自動車産業などはTPPに大反対です。

従って成功する保証は全くありません

しかし米議会は日米貿易協定をファスト・トラック扱いにし、短期勝負に出る構えを見せています。したがって、ひょっとすると向こう二か月のうちに、あれよあれよという間に調印まで漕ぎ着けるというシナリオも、ゼロではないのです。

そうなれば、日本株への評価は、一皮むけると思います。