ヴァーチュ(ティッカーシンボル:VIRT)が先週新規株式公開(IPO)されました。この企業の本質は、ちょうどクレジットカード決済のビザ(ティッカーシンボル:V)のようにトランザクションのシステムを提供するテクノロジー企業だということです。

だから社員は140人くらいしか居ません。

同社は株式、債券、FX、コモディティ、オプションなどの、価格が目まぐるしく動く原資産を目にも止まらないスピードでトレードする際のプラットフォームを提供しています。業種分類としてはCMEグループ(ティッカーシンボル:CME)やインターコンチネンタル・エクスチェンジ(ティッカーシンボル:ICE)と同じ、証券取引所に分類されます

同社の場合、はじめから高速トレーディングだけを念頭にサービスを設計しており、完全自動化されたビッド(Bid)、アスク(Ask)価格提示システムを持っています。

このプライシング・エンジンは基本的にひとつのシステムであり、それが株式、FX、コモディティ、債券、オプションなど、あらゆる原資産のトレードに使われます。225のカテゴリーの、1万種類以上の証券に34か国の取引相手と常時トレードしているわけです。

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同社は、相場が高い、安いという方向性に賭けることは一切せず、あくまでもより狭いビッド、アスクを提示することでプライス・ディスカバリー(価格発見)を促進することのみをサービスとしています。

自己ポジションを取り、相場が高くなる、安くなるという方向性に賭けることで儲けることは、一切、しません。第一、同社のバランスシートには券面の在庫は少ないです。

それではどうやって儲けているか? ですが、この会社は一日に平均して80万回、顧客のトレードを突き合わせます。そして一回の平均の注文株数は僅か200株です。つまりそういうチョコマカした注文に応じることで、ほんの僅かの利ザヤを抜いてゆくわけです。これはイメージにすればグーグルのアドセンスのクリック報酬のイメージに近いです。



この関係で投資銀行のトレーディング・デスクなどは、同社の競争相手ではなく、彼らが注文を執行する際のひとつの発注先としてビジネス・パートナーの関係を築いています。

基本、ソフトウェアによるトレードのマッチングしかやっていないので、費用は固定的です。またJPモルガンがプライムブローカーとしてトレードの受け渡し処理や資金の決済をやっているので、それらにまつわるインフラストラクチャ・コストは少ないです。このため営業キャッシュフロー・マージンは38%近くもあります。

同社の売上高は、同社が参加しているいろいろな市場における出来高とマーケットシェアによって決まってきます。その出来高は、市場のボラティリティーに左右される場合が多いです。

逆の見方をすれば、同社の成長は、シェア・アップないしは新規市場への参入によってのみ、もたらされると言っても過言ではありません。

その点、債券トレーディングは未だ小さいですが、今後、自動化が進んでゆくと思われます。

また株式ではETFのトレーディングに同社は強く、投資信託ならびに株式市場におけるETFのシェアがどんどん上がっているので、これは同社にとってフォローの風が吹いていることになります。

また同社の場合、固定費率が低く、しかも売上高はボラティリティー次第ということなので、新規株式公開直後から配当を積極的に払ってゆく方針です。一株当たり24¢が予定されています。これは配当利回りに直すと4.2%です。