先週、ダウ工業株価平均指数が瞬間1,000ポイント暴落したときのことです。

まあ株の急落にもビックリしたわけですが、それと同じくらい奇異だったのは、フライト・ツー・セイフティ、つまり「安全への逃避」で買われるはずの米国債が、ウンともスンとも動かなかったことなんですね。

これにはリスク・ヘッジを目論んでいたアルゴ君たちも「ぎゃあああああああ」(笑)

問題は、なぜアルギャアになってしまったか? その原因です。

FRBのブレティンを読むと、その主犯がわかります。

中国が米国債を売っていた! 金額にして150億ドル、、、

いま、債券を市中で売却すると、売った人には売却代金が入り、それだけ市中からキャッシュが吸い上げられます。つまりこれは引締め効果があるということ。

リーマンショック以降、アメリカ、ユーロ圏、日本などはQE、つまり量的緩和政策を行ってきました。QEというのは中央銀行が市場から債券を買い取り、その買い付け代金のキャッシュを市中にばらまくことを指します。

今回は、その逆だからQEならぬQT、つまりQuantitative tightening (量的引締め)が起きてしまったわけです。

(150億ドルって、イメージできないな)と思う読者も居るでしょうから、懐かしいグラフをお見せします。下はFRBが量的緩和政策を徐々に縮小、つまりテーパーして行った当時の減額の様子を表したものです。

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すると連邦公開市場委員会(FOMC)があるごとに、100億ドル減額されていたことが読み取れます。つまり今回、中国が処分した米国債は、「QEテーパーの1.5回分」に相当すると言えるわけです。

僕はこのところセミナーなどで「中国が人民元を切り下げるかもしれないから、気を付けて!」とお願いしてきました。そのシナリオに関しては、僕のロジックを理解してくれる視聴者も多かったです。

でもそれに続いて「海外で誰が米国債を保有しているか?」というグラフを見せて「ひょっとすると中国がトレジャリーを売り始めるかも……」とコメントしたことに対しては、「いやあ、いくらなんでもそれは無いでしょう?」というpush back(反発)が沢山寄せられました。

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(中国は、お金持ちなんだから、よっぽど窮さない限り、米国債を売るところまでは落ちぶれない)というわけです。

Lo and behold(笑)、中国は、サッサと米国債を処分しはじめたわけです。

これは、我々日本やアメリカの投資家の目線ではなく、中国政府の立場から物事を考えれば、すごく納得の行く決断です。なぜなら米国財務省証券を処分しても、中国国内の資産価格には打撃を与えませんし、流動性の面で、大量の資金を即、こしらえる方法としては、これがベストだからです。

こうして米国債を処分して得たキャッシュは、中国本土株の買い支えなどに投入されたらしいです。

もうひとつ噂されている影響は、ドルを人民元に転じたことで、はからずも人民元を買い支えたのと同じ効果が出てしまったということ。

先週、まるで朝令暮改のように「もう本土株式市場は、支えません」とシグナルしておきながら、後で再び買い支えたのは、そういうおカネのやりくりの事情もあったのではないか? とウォール街の関係者の間では憶測が飛んでいます。

さて、アメリカにしてみると、時ならぬ引締めで、景気がつんのめるリスクが出てくるわけです。これは9月17日の利上げの判断を、いっそう複雑なものにします。

FRBは金融政策の主権が犯されたと感じ、おかんむりです。アメリカは国際通貨基金の特別引出権(SDR)の準備通貨採用に関し、拒否権を持っているので、9月の米中サミットでは、ごきげん斜めのワシントンDCに対し、中国はとてもビミョーな立ち回りを要求されます。

そのことは、もう一度、人民元が切り下げられる可能性も高い(=IMFは「人民元の動きを、もっと自由に!」と要求しているわけですから)ということです。