「The Courage to Act」はベン・バーナンキ前FRB議長によるリーマンショックの回想録です。

本書から読者が得られるものは:

1. ベン・バーナンキはどんな人生を歩んできて、どういう考え方をもっているか?
2. FRBの仕組みとそれを実際に内側から動かす際のウンチク
3. バーナンキ在任中の出来事(リーマンショックなど)

に関する情報です。

このうち3.に最も多くの紙数が割かれており、サブプライム危機がどのように展開したか? が克明に記述されています。

ただ僕としてはこの部分は新しい発見に乏しく、読んでいて一番退屈でした。

既に金融危機に関しては多くの書物が出ており、ベアスターンズやリーマン・ブラザーズを巡る、手に汗握るドラマは、多くの語り手によって再現されているので、目新しさに乏しいということもあると思います。

バーナンキは大学教授だったこともあり、歴史を手際よくまとめ、わかりやすく並べることはさすがに上手いですけど、「おやっ」とか、「なるほど、そうだったのか!」という発見はありませんでした。

これと対照的に1.と2.に関しては、かなり楽しめました。

彼がハーバード大学に進学し、まだ自分が何を専攻したいのか決めて無かったとき、日本史や日本文化の講義を受講したこと、たまたま入門経済学の講義を聞いたとき、イッパツで(自分がやりたいのは、これだ!)と感じたこと(このとき教壇に立っていたのは、マーチン・フェルドスタイン)、大学院で経済学を学ぶ際、なぜハーバードではなくMITを選んだか(そのときまでにはポール・サミュエルソン、ロバート・ソロウなどがMITの評判を確立し、研究者の間ではMITがトップ・スクールだとされていたから)、進路の面で誰に最も影響を受けたか(=スタンレー・フィッシャー、ミルトン・フリードマン)、ウエルズレー・カレッジの女学生たちとの合コンで将来の妻に会い、二か月でプロポーズしたこと……などが書かれています。

その後、バーナンキはプリンストン大学の経済学部長になり、FRBのガバナーに推されます。長テーブルの末席から見た、当時の議長、アラン・グリーンスパンの印象や、彼とバーナンキのスタイルや信条の相違点、金利政策を決めるまでのプロセスが、グリーンスパンとバーナンキではどう違うか? などは、我々、マーケットの参加者にとって非常に興味深いポイントです。

バーナンキはグリーンスパン時代の習慣を大幅に改め、より透明で、コンセンサスに基づいた意思決定プロセスを連邦公開市場委員会に持ち込みました。

バーナンキの後任であるジャネット・イエレンも、バーナンキの路線を踏襲しています。

純粋な読み物としては2007年に出されたアラン・グリーンスパンの回想録「The Age of Turbulence」の方が面白かった印象がありますが、FEDウォッチングをする上でのヒントという意味では本書の方が多くの手掛かりを与えてくれると思います。