サウジ・アラムコがIPOの検討に入っています。

現時点ではサウジ・アラムコの巨大な事業ポートフォリオのうち、どの部分が上場されるかわからないので、時価総額の算定はむずかしいです。

ただ確認埋蔵量ひとつをとっても上場石油会社で最大のエクソン・モービル(ティッカーシンボル:XOM)の10倍なので、世界最大級の上場会社になると思われます。

一体、アラムコって、どんな会社なのでしょう?

同社は1933年にカリフォルニア・アラビアン・スタンダード石油(CASOC)として発足しました。当初はスタンダード石油カリフォルニア(ソーカル)が株主でした。

後にテキサコスタンダード石油ニュージャージースタンダード石油ニューヨークなどを株主に加え、アラビアン・アメリカン・オイル・カンパニーに名称変更されます。現在のアラムコという名前は、それを短くした呼称です。

OPEC(石油輸出国機構)が結成されたのは1960年ですが、その当時はベネズエラとイランがリーダーであり、サウジアラビアは後塵を拝していました。

2

その後、大型油田の発見が相次ぎ、サウジアラビアはどんどん頭角を現してきました。

そんな中、1973年から国有化がはじまり、当初25%株式がサウジ政府に譲渡されました。

その翌年、政府の持ち株比率は60%に引上げられます。

そして1980年に100%国有化が完了しています。

現在の確認埋蔵量は原油が2,611億バレル、天然ガスが294兆立法フィートです。

1日当たりの原油生産高は950万バレルです。

サウジアラビアの原油生産直接コストは、約6ドルです。これは米国のシェールオイル業者が50ドル~60ドルの採算ラインであることを考えると、圧倒的なコスト競争力だといえます。

3

サウジ・アラムコの原油は、下の円グラフにみられるような仕向け先に出荷されています。

1

同社はラスタヌーラ、ヤンブー、リヤド、ジッダに精油所を持っているほか、SAMREF、SASREF、ペトロ・ラビグ、SATORPのジョイント・ベンチャーを展開しています。アラムコ全体の、ワールドワイドでの精製能力は310万バレル/日です。

同社には6万人の従業員が働いており、そのうちの1万人は世界中から働きに来ているプロフェッショナル、すなわちエクスパトリエートです。

彼らは下の動画のような恵まれた環境の下で暮らしています。



それではなぜ、サウジアラビア政府はサウジ・アラムコを民営化するのでしょうか?




その第一の理由は、国庫に対するプレッシャーです。サウジアラビアは肥大化した政府支出のため財政均衡に必要な原油価格は106ドルとなっています。

4

現在の30ドル台の原油価格では、当然、サウジ政府は赤字を垂れ流しているわけです。

この収入不足は、おもに貯蓄基金、つまりサウジのソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)の蓄えを取り崩すことで賄っています。

財政赤字を貯蓄基金で埋め合わせすることが何年続けることが可能か?とうことを財政バッファーと言います。UAEの場合、26年あります。カタールやクウェートは23年です。これに対してイランは8年、サウジアラビアは6年、リビアは3年しか持ちません。

6

サウジ通貨庁の純対外資産のピークは2014年で88兆円でした。

5

2015年にはそれが80兆円に下がる見込みです。率にして前年比-8.9%です。

2016年にはさらにそれが75兆円にまで下がる見込みです。率にして前年比-6%です。

言い換えればサウジ通貨庁の「処分売り」は、毎年5兆円程度の売り圧力になるわけです。

勿論これは株式や債券を含めた全てのポートフォリオです。従って日本株部分はその6%程度、つまり年間で3600億円程度の売り圧力だと思います。

サウジ・アラムコのIPOは、そのような世界のマーケットに対する売りプレッシャーを和らげる効果があります。