ゼネラル・エレクトリック(ティッカーシンボル:GE)がボストンのウォーターフロントの再開発地区、イノベーション・ディストリクトを新本社所在地に選んだ模様です。正式発表は明日の予定です。

ゼネラル・エレクトリックは第二次世界大戦以降、コネチカット州フェアフィールドを本社にしてきました。しかしコネチカット州が企業に対する課税を強化する決議をしたことを受けて、転出先を探していました。今回、ボストンへ移るのは本社機能だけなので、人数としては800人程度だと思います。

ただダウ30採用銘柄であり、アメリカのブルーチップ企業の中でも最もブルーチップな会社のひとつがイノベーション・ディストリクトを本社所在地に選んだことで、ボストン市が取り組んできた、都市再開発が成功していることが、今回、強烈に印象付けられることになったというわけです。

イノベーション・ディストリクトはローガン空港の対岸に位置し、コンヴェンション・センターなどがあります。ここは1830年代に軽工業地帯として発展しましたが、最近までさびれていました。言わばロンドンのドックランドの再開発のボストン版というわけです。

ボストンはアメリカの大都市の中でも、最も古い都市のひとつであり、保存されるべき歴史的な建築も多いです。それは逆に言えば再開発しにくいということを意味します。その点、イノベーション・ディストリクトは、ウォーターフロントの倉庫街であり、比較的そのような制約を受けません。

ボストン市はここに5,000人分の新しい雇用を創造し、200の企業を誘致する計画です。そのうち3割はテクノロジー企業、2割はデザインや広告などのクリエイティブ産業、15%はバイオテクノロジーやグリーン・テクノロジーというMIXをイメージしています。すでにこの計画は着々と進んでおり、これまでに4,000人を超える雇用が、この地域で発生しています。

MITの近くで創業したバイオテクノロジー企業、ヴァーテックスなども、手狭になったのでイノベーション・ディストリクトに移ってくることになりました。

ボストン市は「ディストリクト・ホール」というコミュニティの核を形成する施設をイノベーション・ディストリクトに建設しました。

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これはコワーキング・スペースやインキュベーターではなく、あくまでもこれからこの町で、なにかやりたいと思う人たちにスペースを提供し、人脈やアイデアをはぐくんでもらうための公共スペースです。

これを運営するボストン市の二コル・フィチェラ氏は、下の動画で「これは市の施設であり、市民のためのリビングルームだと考えて欲しい」と訴えています。



このアイデアはボストン市が構想し、民間企業から出資を仰ぎ、運営は出資した民間企業の関連会社であるベンチャー運営会社に委託されているという形態をとります。

あくまでも市の施設であることから、そこへは市民の誰もがアクセスできるし、誰かを排除し、特定の団体の利益だけに資するということはできない仕組みになっています。

でもその建設運営資金は市の財政から捻出するのではなく、このコミュニティが成功することでいろいろな恩恵に浴する、ここを拠点とする実業界からの寄付で成り立っているというわけです。しかも運営はベンチャー精神をもつ組織に委託され、お役所仕事の堅苦しさを除去しています。

東京でもウォーターフロントの再開発、高級化が話題になっていますが、ボストン市はイノベーション・ディストリクトを、裕福層やネット系企業だけが集まる、オシャレで排他的な場所にするという考えに、真っ向から反対しています。「町は、市民のための場所であり、誰にでも開かれているべきだ」という下の動画の主張には、説得力があります。