日銀がマイナス金利導入を発表しました。マイナス金利の導入自体は、欧州中央銀行(ECB)その他も既にやっていることなので先例があるし、市場におけるこれまでの連綿とした金利の推移の自然な延長線上にあることだから、別にキケンでは無いという気がします。

日銀は年間80兆円(6,740億ドル)相当の国債の買い入れを行っており、国債の3分の1は、すでに日銀保有となっています。すると量的緩和政策だけでは、いずれ日銀の全体に占めるシェアが大きくなりすぎて、身動きが取れなくなる可能性があるわけです。

でも景気は悪いのだから、ここで中途半端に緩和政策を断念するわけにはゆきません。

ましてやお隣の中国では経済が鈍化しており、人民元切り下げの必要は増しています。それが起こると日本の景気は一層悪くなるリスクがあるわけです。

ドル/円で116円の水準は、長期でのトレンドの転換点です。ここを破って円高が進んでしまうと、過去3年続けてきた努力が水の泡と消えてしまうリスクがあります。

日本の株高の演出は、円安誘導と切っても切れない関係があるので、円安の状況を創り出せなくなれば、万事休す。

その点、今回の発表後、株はともかく、為替は(ひょっとすると円高に振れるかも?)という状況から、ハッキリとこれまでのレンジ内に押し返すことに成功したので、一応、日銀は勝利宣言できると思います。

今回のマイナス金利ですが、現在、当座預金の残高は250兆円前後あり、そのうち適用対象となるのは「政策金利残高」の10兆円~30兆円のみです。つまり4%~12%にすぎないということ。だからセンセーショナルなアナウンスメント効果に比べれば、やっていることは実はそれほど過激ではないのです。

これは以前にも書きましたが、米国の金融関係者は中央銀行の仕事を、しばしばストリッパーに喩えます。

ストリッパーは、結局のところ裸になるだけだから、ステージの上で起こる事というのは退屈なほど「お定まりのコース」です。

でもその決まり切ったルーチンを、なんの工夫も無く、惰性でやっていたら、観客はすぐにソッポを向きます。

映画『ジュノ』の脚本を書いた元ストリッパー出身のディアブロ・コーディーは、NPRのインタビューで、ストリッパーという仕事について次のように語っていました。

ストリッパーの仕事って、日によっては完璧にお客さんを自分の思うままに支配することが出来る夜もある。そういう日は自分がパワフルで美しいと感じるわ。でも逆にお客が乗ってこない、まるっきりシカトされる夜もあるの。そういう日は屈辱的だし、みじめ。自分はまったく無力なんだって、そう感じるの。


中央銀行は、ごく限られた政策ツールのみでマーケットに働きかけないといけません。しかし市場参加者は中央銀行の手の内を常に先読みしようとします。投資家サイドから(日銀の考えている事なんて、楽勝で読める)と思われてしまったら、それはストリップの例でいえば、「客にまるっきりシカトされる夜」になるわけです。

すると「引っ込め!」となじられるし、下手するとビール瓶が飛んでくるかもしれません。これはもちろん中央銀行家の失策ではあるわけだけど、ムードが荒れてくると最終的にそれは経済全体に影響を及ぼし、結局、国民生活が脅かされることにすらなるのです。だからこそ:

誰がボスであるか思い知らせてやる!


というマーケットを引っ張ってゆける力は、優れた中央銀行家に無くてはならない資質なのです。

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