最近、ハイテクやネット企業では「うそつきEPS」を報告することで儲かっているように見せかける行為が目に余るようになってきています。
米国証券取引委員会(SEC)のメアリー・ジョー・ホワイト委員長は、先月、米国商工会議所におけるスピーチで、「今後、この問題に関し調査する」とコメントしました。
ここで言う「うそつきEPS」とは、ノンGAAP EPSを指します。
GAAPとはGenerally Accepted Accounting Practiceの略で、アメリカで一般に受け入れられている会計手法という意味です。
それにノン(Non)が付くわけですから、ノンGAAP EPSとは「変則的なやり方で計算された一株当たり利益」ということになります。
なおノンGAAP EPSは、ナスダックの殆どの企業がやっています。これは違法ではありません。でも感心しない行為です。
下は主なハイテク・ネット企業のGAAP EPSならびにノンGAAP EPSを比較したグラフです。

一番ひどいシトリックス(ティッカーシンボル:CTXS)の場合、これら2つの数字が倍ほども違います。フェイスブック(ティッカーシンボル:FB)も5割近く水増しされています。
それでは「変則的なやり方」とは、具体的にどのような点を巡って横着な会計が行われているのでしょうか?
下はフェイスブックのGAAP EPSとノンGAAP EPSの食い違いがどこから発生しているか? を示したグラフです。

橙色のストックオプション費用が、その大部分であることがわかります。その他、買収で生じたのれん代の償却なども関係しています。
ストックオプションは、平たく言えば「株で支給されるボーナス」です。これを「臨時的なものだ」とする考えから、給与などの費用から除外して考えるというわけです。
しかし……
フェイスブックやアルファベットに就職する社員は、現金によるサラリーなんて目じゃないです。ストップオプション、つまり株でボーナスをもらうために働いているのです。
僕は投資銀行に勤めていたけれど、キャッシュでもらう現金部分より、株でもらうボーナスの方が3倍くらい大きいのが普通でした。
だから社員の生活設計にストックオプションはしっかり組み込まれているわけであり、それを「臨時」と呼ぶのはかなりムリがあるわけです。
前回、この「うそつきEPS」が問題になったのは、2000年にドットコム・バブルが弾けた直前、直後でした。
もしSECがノンGAAP EPSによる会計報告に対する基準を厳格化した場合、EPSがドカッと減る企業が出る可能性があります。
先日、フェイスブックが第1四半期の決算を発表した際、CFOのデイブ・ウェーナーが「今後カンファレンスコールではGAAP EPSの数字を使って議論することにする」とわざわざ断っていたのは大変興味深かったです。