サウジアラビアは、原油価格の低迷で、これまでに積み上げてきたオイルマネーの蓄積を、僅か2年で使い果たしてしまうかもしれない危機に瀕しています。

そこでムハンマド・ビン・サルマン副皇太子が中心となり「ビジョン2030」と題された経済大改革が打ち出されました。

下はそのアクション・プランのアウトラインです。

「ビジョン2030」

【人的資源の活用】
わが国でじゅうぶんに活用されていない資源は、人的資源だ。

国民こそが我々の社会の本当の豊かな資源であり、これを活用しなければいけない。

イスラムの価値観を重視しつつ、温和、寛容、秀でた人材の起用、規律、平等、透明性などを確保することを通じて、社会のポテンシャルを引き出さなければいけない。

巡礼でサウジアラビアを訪れる回教徒に敬意を払い、彼らを支援することに最大限の労力を傾ける。

回教に関する展示をする世界最大の美術館を建設する。

文化や娯楽は生活の質の向上に欠かせない。これを育み、精神的に豊かな社会を作る。

健康の促進とバランスのとれたライフスタイルも生活の質を向上させる。スポーツの振興も目指す。

都市生活の安全の確保や水、電気、公共交通などを一層充実させる。

【環境ならびにサステイナブルな社会】
環境を保全し、天然資源を浪費しない。

次の世代にそれらを引き渡すのが我々の責任である。

ゴミ処理、リサイクル、環境汚染の防止、水の無駄遣いを止める、美しいビーチを保全し、自然公園の景観を守り、それらを広くすべての人たちに解放する。民間と政府のパートナーシップによりこれを実現する。

【強固な社会の建設】
家族はしっかりした社会の基礎であり、まず家族を守ることからはじめなければいけない。

具体的には子供が安心して育つことができる場所をしっかりと確保し、ケア施設を整備し、子供の才能を伸ばす教育を施す必要がある。

親が子供の教育に参加する度合いを強化し、触れ合いを通じて子供の才能を開花させ人格形成を助ける。

どの家族も自分の持家を持ちたい気持ちに変わりは無い。手始めに2020年までに持ち家比率を5%UPすることを目標とする。

持家にまつわる法制度を改革し、民間企業が住宅建設事業に乗り出せるように資本の提供、住宅ローンの整備などを進める。

【社会保障制度】
サウジアラビアの社会保障制度は一層近代化されなければいけない。

より平等でより効率的な支援の実現を目指す。

政府がこれまで無料で提供してきたガソリン、食品、水、電気などは有料化することで、それによって浮く費用を支援が本当に必要な人に回すべきだ。

わが国の病院は、現在、人口千人あたり2.2ベッドであり、これは世界水準に達している。今後国民が長寿になるにつれ、高齢者向けのケアを充実させなければいけない。

公共セクターは医療のプランニング、法制度の整備、監督などにより注力するとともに民間企業が医療セクターで活躍できる余地を作る必要がある。

【経済政策】
子供たちのスキルを育て、みんなが貢献に参加できるような経済を整えないといけない。

そのためにはまず教育と実技トレーニングに力を入れる必要がある。

子供たちが高品質で多様性のある教育機会を与えられることが必須だ。

就職カウンセリングの窓口を開設し、スキルや能力に適した職業の斡旋、アドバイスにつとめる。

またスカラーシップを一層強化し、外国の一流大学にどんどん学生を送り込み、彼らには卒業後、サウジの国家建設の優先分野で大いにリーダーシップを発揮してもらえるようにしたい。テクノロジーや起業家精神の面でも特にそれを期待したい。

中小企業や家族経営のスモール・ビジネスもどんどん振興したい。

雇用やイノベーションは、中小企業を中心に創出されるものだから、サウジアラビアはスモール・ビジネスやベンチャーを積極的に支援してゆかなければいけない。

若手の起業家が、思い切って起業できるようにビジネス・フレンドリーな法整備を行いたい。

SNSやデジタル・プラットフォームはすでに我が国では広く浸透しているが、全ての人々がそれらへアクセスでき、そのデジタル・インフラ上でマイクロファイナンスやNPOや様々な家族の支援のための活動が行える環境を整備する必要がある。

サウジアラビアは老若男女すべての国民が平等に雇用機会にチャレンジし、各自の才能を最大に発揮できる社会の実現を目指す。また若者だけではなく老人にも再教育などを通じていつまでも生産的な人生が送れるようにしなければいけない。このため雇用創造失業予防委員会を設置する。

活動的な社会を実現するのには若者が活躍できる舞台を用意することが大事だ。

先進国の多くは少子高齢化の問題を抱えているが、わが国の課題は国民の50%が25歳以下であり、大量の若年層を抱えている点にある。

この若者たちのエネルギーを、起業家精神を通じて大いに開花させることを政府は考えなくてはいけない。

サウジアラビアの女性はわが国の大きな財産だ。

既に大学卒の50%以上は女性であり、彼女たちは高度なスキルや才能を発揮できる場所を必要としている。

彼女たちの生産的な可能性に政府が投資することで女性たちの未来を強固なものとすることは社会の発展や経済の活性化につながる。

2030年までに現在の11.6%という失業率を7%にまで下げる。そのためには中小企業のGDPへの貢献度を35%にまで高める必要がある。

女性の労働参加率も現在の22%から30%にまで高める。

現在、サウジアラビアは石油に依存した経済構造になっている。これをもっと多角化しなければいけない。

過去25年間にサウジアラビアは平均して年率4%で経済成長してきた。既にサウジ経済は世界で20位以内の経済規模に発展している。しかし今後はもっと高いランキングを目指すことが出来る。

国営の企業を民営化し、長期的な視点からサウジアラビアの経済構造を改革する。

このためサウジ・アラムコは国家の直営ではなく、公的投資ファンドのポートフォリオに移す。

公的投資ファンドは民間企業と競争するのではなく、新しい産業分野を興す際、必要となる資本の出し手となることでニュー・エコノミーの開花を支援する。

サウジアラビアのGDPのうち60%が公的部門となっている。これは政府の割合が大きすぎ、民間企業が活躍できない。

民間企業が活躍できるようにするには投資機会を開放し、資本を呼び込み、イノベーションを支援する政策を打ち出し、競争を確保し、民間企業に立ちはだかる障壁を取り払わなければいけない。そのためには常に制度改革を行い投資家の声に耳を傾け政府の介入を限定しなければいけない。

国防のための軍需産業はもっと国産化を押し進めたい。サウジアラビアは世界で3番目の武器の購入国だが、国内からの調達は予算の2%に過ぎない。これではダメだ。

サウジアラビアには石油の他にもいろいろな鉱物資源がある。これを積極的に開発する。サウジアラビアは砂漠なので太陽光発電にとても適している。国内でのエネルギー消費を石油から再生エネルギーに切り替えることで石油の無駄遣いをやめる。

2030年までにサウジアラビアを世界のGDPランキングで現在の19位から15位まで押し上げる。

アブドラ国王金融センターをしっかり発展させる。

小売セクターを一層充実させる。

中東の物流ハブとなることを目指す。