もし皆さんが株やFXをやっているのなら、そろそろ「トランプ・ショック」が来る可能性について、真剣に考え始めた方が良いでしょうね。

【凄いモメンタム】
それはつまりトランプが勝つ確率が、高くなっているということです。

下はReal Clear Politicsの集計したヒラリー・クリントンならびにドナルド・トランプへの支持率です。各調査機関のデータをアグリゲートしてあります。

Real Clear Politics Battle for the White House RCP Poll Average

そのグラフを見るとトランプのモメンタムが凄いことがわかります。

【なぜトランプは勢いに乗っている?】
問題は「なぜトランプは勢いに乗っているのか?」ということです。

僕に言わせれば、その答えはカンタンで、「トランプの方が有権者へのアピールが上手いから」ということに尽きます。

このところアメリカでは毎日のように発砲事件、テロ事件があり、それも警察官を狙い撃ちにする、元海兵隊員のテロなど、まるで映画に出てきそうな手強い悪者による、突拍子もない攻撃で、皆、ガクブルになっています。

そんなとき、トランプはすかさず「法と秩序(Law & Order)を!」と叫んだりするわけです。

大衆の機微に、まるでラジオのチューナーを慎重に合わせるように、常に耳を澄ましている……トランプには、それが出来るわけです。

トランプは、偶然で大衆の心を掴むのが上手くなったのではありません。その道のエキスパートから、徹底的に教育されてきたのです。そのエキスパートとは、最近セクハラ問題でFOXニュースの会長の座を譲った、ロジャー・エイルズです。

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ロジャー・エイルズは、保守的な偏向で知られるFOXニュースをゼロから立ち上げた人です。加えてニクソン、レーガン、ブッシュ(父の方)など、歴代の共和党大統領のメディア・コンサルタントを務めてきた「イメージ・メーカー」です。

エイルズはずっと昔からドナルド・トランプに目をかけていて、トランプに対してアドバイスしてきました。

アメリカでは「大衆というものは、女性と同じで、誰かにリードしてもらいたいという願望がある」という表現が良く使われます。

大衆の、かなえられなかった夢や、ひそかな願望、そして不満……そういうことを誰よりもトランプはしっかりおさえています。だから瞬時にして視聴者と「つながる」ことが出来るのです。

【大衆の、声なき声に応えよ!】
先週、共和党大会があり、そこでトランプがアクセプタンス・スピーチをしました。

僕もそれを聞いていたのですが「サイレント・マジョリティ(声なき多数派)の言っていることを……」とトランプが口走ったのを聞いて{あっ!}と耳をそばだてました。

なぜなら「サイレント・マジョリティ」という言葉は、リチャード・ニクソン大統領が編み出した表現だからです。

トランプ流の世界観からすれば、白人低学歴低所得者層、つまりいわゆる「レッドネック」と呼ばれるような人たちは、こんにちサイレント・マジョリティの立場に置かれており、彼らの声は、政治にちゃんと反映されていないというわけです。

先日のトランプのスピーチは、それ以外の部分も、1968年のリチャード・ニクソンのスピーチの焼き直しでした。これは、偶然ではなく、意図的にそうしたのです。

リチャード・ニクソンの国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャーは、ニクソンが大統領選を戦った頃の雰囲気について言及しています。

「ニクソンが大統領に立候補したときのアメリカは、まるで内戦が起きているように世論が紛糾していた。そして大衆はエスタブリッシュメントに対し、極めて懐疑的だった」


これは、現在の状況によくあてはまります。

【外交に関する、2つの価値観】
ニクソンが登場する前のアメリカの外交は、いわゆるウイルソニアン(Wilsonian)、つまりウッドロー・ウイルソンの理想主義を踏襲する外交でした。オバマ大統領は、ウイルソニアン的です。

ところがデモクラシーを世界に広めようとするオバマの試みは「アラブの春」を誘発し、エジプト、リビア、シリア、バーレーンなどで、次々に混乱が起きました。特にシリアはメチャクチャになってしまいました。

一方、ニクソンはパワー・バランスを重視した外交で成果をあげました。

リチャード・ニクソンは昔、自分の弁護士事務所を経営していました。ペプシコが最大の顧客でした。そのペプシコの国際展開の法務に絡んで、世界を飛び回りました。

また、アイゼンハワー大統領時代に、副大統領として世界各国を歴訪しました。ある意味、歴代のアメリカの大統領の中で、いちばん国際経験豊かな大統領と言えます。

その経験からニクソンは「世界の政治家は高邁な理想や主義で動いているのではない。かれらは国益(national interest)、もっと言えば、実利で動いている」と感じます。つまりお互いにウイン=ウインのメリットがあれば、どんな相手ともディールをすることが出来るということです。

ニクソンは「民主主義が根付きさえすれば、世界は平和になる」というような考え方はしませんでした。むしろ「世界は常に、パワー・バランスの上に成り立っていて、状況は常に流動的だ。だからバランスを崩さないように、つねに均衡点を探るべきだ」と考えます。

このようなニクソンの考え方から、中国との国交回復につながる「ピンポン外交」などが登場するわけです。

【なぜトランプはニクソンを学ぶか?】
ドナルド・トランプは、リチャード・ニクソンを、すごく研究しています。

トランプの心の中で(自分は、嫌われ者で、アウトサイダーだ)という心理が、たぶん働いているのでしょうね。ニクソンもアイゼンハワーの副大統領として選挙戦を戦った時は「素人のアウトサイダー」という烙印を押されていました。

ニクソンは、ワシントン・インサイダーの意見を、殆ど全部、無視しました。トランプも、「空気が読めない」ことを誇りにしています。

問題は、ドナルド・トランプが、誰からリチャード・ニクソンの存在を聞いたか? です。

それはドナルド・トランプの「師匠」だった、ロイ・コーンという老獪な弁護士からです。

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このロイ・コーンは、黒幕中の黒幕であり、ある意味、アメリカで最も腐った弁護士と言えます。

彼はソ連のスパイだというかどでローゼンバーグ夫妻を死刑に追いやったほか、「赤狩り」の際、マッカーシーの手先として次々に共産主義者を投獄しました。ところがその糾弾の仕方が違法だったということで失脚し、その後はマフィアのボス、ジョン・ゴッティの弁護士となります。

その際、ロイ・コーンはリチャード・ニクソンと知り合い、ニクソンの非公式な顧問になります。その後、歴代の大統領とは電話一本でつながる仲になります。

ドナルド・トランプは、うだつのあがらないクイーンズ地区の低所得者住宅を開発していた頃、黒人をわざと入居させず、差別したというかどで訴えられます。

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そのとき、トランプはロイ・コーンを起用し、この裁判を戦います。これがトランプとコーンの関係のはじまりであり、その後、二人はマンハッタンの「Le Club」や「Studio 54」などで遊び歩く仲間になります。

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トランプは日頃から「俺は訴訟されたら、徹底的に戦う。相手が参ったと言っても、手加減しない!」と公言して止みません。このアグレッシブで好戦的なビジネス手法は、ロイ・コーンがトランプに仕込んだのです。

ところでロイ・コーンはゲイで、旅客機をチャーターし、男ばかりでパリまで豪遊に行く際、飛行機の中で乱交パーティーして、機内をメチャクチャに壊し、汚してしまい、航空会社から訴えられるという武勇伝もあります。

ロイ・コーンは1980年代にAIDSにかかり、死にます。その経緯はテレビドラマ、「Angels in America」の題材になったほどです。

病身のロイ・コーンは、ドナルド・トランプの庇護の下、トランプが所有していたマンハッタンのバルビゾン・プラザ・ホテルの一室に籠り、そこで死にます。

BarbizonPlazaHotelPC

【トランプの登場が、投資にどう影響する?】
NAFTAをやめる、NATOを見直しする、ロシアと仲良くする、日米安保条約を見直す……トランプが主張している、これらの事は、いずれもニクソンが言いだしそうなコトです。

ニクソンは米国製造業の国際競争力が衰え始めたとみると、すぐに「ニクソン・ショック」でドル/円の変動相場制に移行し、ドル安政策を始めました。このあたりの采配を、トランプは大いに参考にすると思います。

「ニクソン・ショック」から、1970年代終盤のコモディティのピークまで、ゴールドは+1900%という強烈なラリーを至現します。

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