年初からこのかた、金価格は+27%上昇しました。

米国の株式地場新聞、インベスターズ・ビジネス・デイリー(IBD)は、米国の株式市場を197の産業グループに分類し、それぞれのパフォーマンスを記録しています。

過去半年間のベスト・パフォーマーは金鉱株のグループで、年初来の上昇率は+122%でした。つまり金価格そのものの上昇率より、金鉱株の上昇率の方が遥かに大きかったのです。

主な個別株の年初来パフォーマンスは下のグラフの通りです。

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主な産金会社の事業規模を年間生産高という尺度で見ると、下のグラフのようになります。

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主要企業の採掘コストは以下の通りです。

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ところで、金は、どういう局面で人気化するのでしょうか?

金価格はリーマンショックの前から騰がっていましたが、そのときはBRICsブーム、コモディティ・インフレがテーマでした。

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上のチャートで丸印がリーマンショック直後の金価格のボトムです。


リーマンショック以降、世界の景気は1929年の大暴落後の世界恐慌に次ぐ不況となりました。バーナンキ議長はこの不況に対処するため大胆な緩和政策を打ち出しました。これがリーマンショック以降の金の上昇相場の原因です。

リーマンショック直後9月11日の安値は742ドル、そこから2011年9月6日のピークには1896ドルをつけたわけだから、上昇率は+155%でした。これは素晴らしい上昇幅です。

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しかしFRBはその後、量的緩和政策を止めました。すると金価格は下落しました。

最近、再び金価格が動意付いています。この金の上昇をどう考えれば良いのでしょうか? 私は、その答えを欧州や日本で起きているマイナス金利に求めることが出来ると考えています。

現在は世界的にデフレ・リスクが心配されています。歴史を遡って、いまと同じような長期に渡る低インフレの時代を探すと、それは下のグラフの赤の破線で囲った部分であることがわかります。

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1953年に朝鮮戦争が終わると、戦争特需の反動の不景気とデフレ・リスクが心配されました。それで米国は長いこと政策金利を低く保ちます。

緩和政策は、累積的に、じわじわと効いてくるものです。当時も、長年に渡る緩和政策で将来のインフレ圧力がゆっくり蓄積され、それが緑の破線で囲った時期のような、インフレ局面を招来しました。

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その部分を拡大したのが下のグラフです。

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とりわけ1971年夏、当時のリチャード・ニクソン大統領がドルとゴールドの兌換制を停止する発表をします。当時42ドル前後で取引されていた金価格は、1980年1月のピークである843へと+1900%もの大相場を演じるわけです。

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僕は「今回も、そうなる」と断言しているのではありません。

ただ僕が言いたい事は、ゴールドを買う「王道のやり方」とは、インフレ・ヘッジとしての金投資(上で見たようにその際のパフォーマンスは+1900%でした)なのであって、超緩和的金利政策の逃げ場としての金投資(上の例では+155%)より遥かに大きなチャンスになるということが言いたいのです。

最近、日本では「ヘリコプター・マネー」とかが議論されていますが、その極意は、おカネの価値をしゃばしゃばに薄めてしまうことを狙っているのです。

皆さんは「インフレとはモノの値段が騰がることだ」と思っているかもしれないけれど、それはそうではありません。インフレとは、おカネの価値がどんどん下がることを意味します。おカネの価値がしゃばしゃばに薄まってしまうから、いままでより沢山の紙幣を持ってきて買い物をしなければ、昨日と同じモノが買えなくなるというわけです。

僕はマーケットの人間なので景気は強いことに越したことは無いし、株は騰がって欲しいと毎日、お天道様にお祈りしています。だから緩和政策だって大賛成です。

でも度を越した緩和政策で日頃からおカネの価値を毀損するようなことを平気でやっていると、いつかその咎めが来る日がやってくる……。そのことを、頭の隅っこにちゃんとおさめておくべき時が来たと思っています。

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ところで数日前に「ドナルド・トランプはリチャード・ニクソンの選挙戦をつぶさに研究し、そのスピーチをパクっている」という事に関する記事を書きました。

ニクソンは大胆なドル安政策(=このときドル/円は固定相場から変動相場制へと移行しました)を打ち出したことで有名です。

だからトランプがニクソンを持ち出すというのは、冗談にしては毒が効き過ぎている気がするわけです。