ブラジル上院で弾劾裁判の審理が終了し、採決が行われました。その結果、賛成61、反対20で定数の3分の2以上の賛成が確保されたことから、ルセフ大統領は正式に罷免されました。

副大統領のミシェル・テメル氏が大統領になります。彼の任期は2019年1月1日までです。

テメル大統領はブラジルが軍政から民政へ移行した際、制定された1988年憲法の起草者のひとりです。また経済運営にあたってはマーガレット・サッチャー的な「小さな政府」の信奉者です。所属政党はブラジル民主運動党(PMDB)です。

今回の罷免は、1992年にコロル大統領が汚職疑惑で退陣した後、イタマル・フランコ氏が大統領になった経緯と酷似しています。フランコ政権は海外の投資家からの信頼が厚く、ブラジル株式市場は大相場を演じました。

したがって当時を覚えている投資家はもう一度、それが再現されることを夢見ています。しかし多政党の連立政権(11政党から成っています)をひとつにまとめてゆくのは大変ですし、その中で国民から不人気な法案を通過させることは容易ではありません。

具体的に取り組まなければいけない問題としては、年金改革(リタイアメント年齢の引き上げ)、政府の負債の圧縮のための公的支出の切詰め法案、労働法の改正などです。これらの法案は労働組合などから強い反発を買っており、デモ行進も起こっています。

ルセフ大統領の罷免が実現したということは、「ブラジルの民主主義が最後にはちゃんと機能したという証しだ」と評価できる一方、相場的には「理想買い、現実売り」による利食いが出やすい局面だと思います。折から米国では政策金利の引き上げの可能性が強まっており、利上げということになると新興国株式は売られると思われます。

それらのことから、目先はブラジル株式市場には弱気です。