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今日、金融関係者にとってチョッと驚くことがありました。それはJPモルガン(ティッカーシンボル:JPM)が時価総額で長い間全米No.1に君臨し続けたウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)を上回ったということです。

ウエルズファーゴ株は強引な営業姿勢に関し上院の公聴会に召喚されたというニュースで-2.74%でした。

2013年12月にロスアンゼルス・タイムズのスコット・レッカード記者がウエルズファーゴのノルマ主義に関する暴露記事を書いのが事の発端です。それが銀行監督当局の立ち入り検査を促し、今回、同行は不正を働いたことは認めないものの1.85億ドルの示談金を払うことに合意しました。

LAタイムズの調査ではウエルズファーゴは支店のスタッフに毎月の営業目標を課し、ノルマを達成できなかった社員は下から順番に解雇したそうです。(これはアメリカ企業では珍しくありません)

具体的には、「ひとりの預金者に対して8つの商品を買わせるのが目標」というゴールをかかげ、単なる普通預金口座と小切手口座(この二つはアメリカ人は自動的に開設します)に加え、クレジットカード、住宅ローン、証券投資口座などの商品を勧誘するわけです。

このように1人の顧客に対し、銀行が展開しているあらゆるサービスをオファーすることをクロス・セリングと言います。クロス・セリング自体には違法性はありません。むしろクロス・セリングをどれだけ上手にやるか? ということは、各金融機関が知恵を絞る経営管理のポイントと言えるでしょう。

ウエルズファーゴの場合、問題を起こしたのは成績優秀者ではなく、底辺の、落伍しかかった社員でした。成績の悪い順にクビになるので、彼らは普通銀行口座を開設に来た来店客に頼んでもいないクレジットカードを発行し、その来店客が「こんなものリクエストしていない」と抗議すると「コンピュータ処理の間違いです」とか何とか言って誤魔化したりしたそうです。

来店客が注意を払っていない隙に複数の口座開設申請書に次々にサインさせたり、果てはサインをねつ造するなど、明らかにルール違反をする行員も出て来たそうです。

このような問題はウエルズファーゴの上層部が指示した事では無く、あくまでも落ちこぼれ社員が自分の首がつながるようにという必死の思いでやったことです。

実際、来店客はそもそもそんなサービスを欲していないわけですから、要りもしないクレジットカードを送付したところでそれがどんどん利用され売上につながるということはないし、大部分は休眠口座になるだけです。言い換えればウエルズファーゴの収益そのものにはそれらの口座は寄与しないということです。

LAタイムズの記事が出て以来、ウエルズファーゴは不正を働いた社員をどんどんクビにしました。これまでに5,000人以上の行員が解雇されたそうです。

ただクロス・セリングの営業目標がある限り、それを達成できない落ちこぼれ行員が出てくるのは必然であり、今後も今回と同様の不正が発生するリスクがあります。このためウエルズファーゴは「一切のクロス・セリングの営業目標を廃止する」と今日、宣言しました。

ここまで書いてくると読者の皆さんは(ウエルズファーゴという会社は、どんだけブラックなんだ!)と憤ると思います。

しかし僕は別にウエルズファーゴの社風が悪いとは思いません。僕の取引銀行はウエルズファーゴです。ウエルズファーゴの行員は良く教育されていて、礼儀正しく、溌剌としており、支店の雰囲気は明るいです。

これに比べるとバンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェースはサービスが悪いですしシティに至っては店舗の雰囲気が陰気ですらあります。

僕自身、JPモルガン・チェースに居たわけだから、顧客と言う立場でシティやウエルズファーゴの店舗を訪れた際には、嫌でも行員教育が行き届いているか? とか支店内が清潔か? というようなことは気になってしまうのです。

ハッキリ言って、今回の問題が明るみになった後も、だからといって(取引銀行を変えよう)と言う風には全然、思いません。

ただ相場的には、これまでやることなすこと全て完ぺきだったウエルズファーゴの「優等生御坊ちゃま」的なイメージに傷がついたことは確かです。

念のために繰り返し書いておくと、今回の問題を契機にウエルズファーゴが下位10%の首切りをやめるということは今後も無いと思うし、それは今後も、どこの銀行でも慣習として続くと思います。

アメリカ企業からそれを取ってしまったら、もうアメリカ企業ではありません。