ウォールストリート・ジャーナルのモーリーン・ファレル記者が「ウォール街の株式引受ビジネスの受入手数料が過去20年で最低になっている」という記事を書いています。

投資銀行が年初来、株式引受ビジネス(=これのことをエクイティ・キャピタル・マーケッツ、略してECMといいます)から得たフィーは僅か37億ドルでした。

その中でも特に低迷が激しいのは新規株式公開(IPO)で、今年はこれまでにわずか68社しかIPOしていません。去年の場合、9月22日までに138社がIPOしていたので、それと比べると大幅な鈍化になります。

IPOの手数料は調達金額の7%にも相当します。これは美味しいビジネスです。だからIPOの低迷は投資銀行にとって痛いです。

その一方で、ブロック・トレードの比率が上昇しています。

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ブロック・トレードとは、まとまった株数を売り手(=これをベンダーと言います。機関投資家や既存の大株主などです)から投資銀行が買い切り、それを一般投資家へ再オファーするビジネスを指します。

通常、ブロック・トレードでは場が引けた後でブロックを買い取り、翌朝、市場が開く前までに買い取った株式をハメコミ終了していなければいけません。

昔は市場価格に対して7%とかの、ざっくりとしたディスカウントでブロックを買い取ることが一般的でしたが、最近はブロック・トレードも競争入札になっており、激しい競争のためディスカウント幅はどんどん小さくなっているそうです。

その場合、バランスシートが大きい、メガバンクの方が有利です。

下は年初来9月22日までの投資銀行フィー収入のランキングです。

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(出典:ディーロジック)

ウォールストリート・ジャーナルの記事ではECMビジネスの低迷の原因として、市中金利が低いこと、ユニコーン企業に代表されるように、若い企業がなかなかIPOしたがらないことなどを挙げています。

しかしマクロ経済的な視点から見れば、小さな規模のIPOが低迷している一因はイノベーションの欠如と密接に関連していると思います。IPOで投資銀行が7%という高いフィーを取れる理由は、新技術や今迄に見られなかったビジネス・モデルなどの「説明料」という側面があります。これは新興国企業がアメリカで資金調達する場合、知らない国の経済のファンダメンタルズを説明する場合などにも当てはまります。

知識のギャップを埋める作業は、付加価値の高いビジネスです。

これに対してブロック・トレードは「いまさら説明する必要もない、すでに慣れ親しんだ企業や投資ストーリー」が存在することが、そもそもディールが成立する前提条件になります。だから自ずと引受け合戦は価格競争に帰着するというわけです。

「頭をつかえ! それが出来なきゃ、バランスシートを使え!」


僕も昔、そんな風に上司から檄を飛ばされたことを懐かしく思い出します。

なお低迷しているのはECMのビジネスだけではありません。債券のトレーディングのビジネスも、HFT(高速トレーディング)の登場やドッド・フランク法の施行により極めて不振です。

下はUBSが1990年代半ばに作った「世界最大のトレーディング・ルーム」ですが、凄惨なコトになっているのが判ると思います。