ETFの運用フィーの激烈な値引き戦争が勃発しています。

今回の値引き競争の口火を切ったのは、世界最大級の機関投資家、ブラックロック(ティッカーシンボル:BLK)です。

同社の旗艦ETF、アイシェアーズ・コアS&P500 ETF(ティッカーシンボル:IVV)の費用比率(=運用フィー)は、これまでの0.07%から0.04%に値下げされました。

これは常に業界で最も安い費用比率を謳い文句にしているバンガードの、バンガードS&P500 ETF(ティッカーシンボル:VOO)の0.05%より低い設定であり、ブラックロックがバンガードに挑戦状を叩きつけた格好になりました。

ブラックロックの値引き発表を受けて、昨日、チャールズ・シュワブ(ティッカーシンボル:SCHW)は5銘柄のETFの値引きを発表しました。

いずれバンガードも応戦してくると思われます。

これを見てウォールストリート・ジャーナルのジェイソン・ズワイグは「いずれETFの運用フィーは0.00%時代が到来する」と予言しています。

なぜならETFは運用フィーで儲けなくても、貸株を通じて日歩口銭が入るからです。

Market HackではETFを論じるにあたり「BUY & HOLDをしたい投資家なら運用フィーが一番安いバンガードのようなETFが良いでしょう。一方、デイトレをしたい人ならSPDR S&P 500 ETFのような、出来高が多くBid/Askのスプレッドが限りなくゼロに近いETFを選んでください!」とアドバイスしてきました。

でもWSJのジェイソン・ズワイグが言うようにETFのフィーが軒並み0.00%になってしまったら……もうフィーの安さだけを基準にETFを選ぶことは不可能になってしまいます。

折からニューノーマルと言われる投資環境の中で、債券の利回りは限りなくゼロに近くなっていますし、その中で満足なリターンを確保することは、ますます難しくなっています。

もちろん「それならいっそのことどんなマーケットの急落や災難が降りかかってこようと、何が何でもポートフォリオの入れ替えや、エクスポージャーの予防的軽減は行わない」という、教条主義的なBUY & HOLDの信奉を貫くことも出来るでしょう。

しかし実際には、マクロ・リスクがポートフォリオの長期リターンに影響を与える度合いは以前より増えています。

それとの関連で、ブラックロックで最初のアイシェアーズを立ち上げたメンバーが、最近、新しい会社を立ち上げています。55キャピタルと言う会社です。

この会社は、「リターンを予想するのは困難だ。しかし、リスクを予期し、それに備えたポートフォリオをETFで構築するのは可能である」という信念に基づいて、さまざまなETFから成るポートフォリオを提案する運用会社です。

むかし(個別銘柄で、どの銘柄を買っていいのか、わからない)という問題があったわけだけど、いまはETFの選択肢が増え過ぎて、(ETFで、どの銘柄をポートフォリオに組み込めば良いのか、わからない)という問題が起きています。

それを解決するのが55キャピタルというわけです。



同社の経営陣はシカゴ大学、MIT、ウォートンなどで教鞭をとった経歴があります。そのようなアカデミックなリサーチとETFに対する深い造詣を組み合わせることにより価値提案をしているわけです。

これからは単なるアクティブ運用のファンドマネージャーはますます苦しくなり、この55キャピタルのような連中にビジネスを奪われるのではないかと思います。

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