10月11日のザラバにこれを書いていますが、ニューヨーク株式市場が久しぶりに大きな陰線を引いています。

今週から米国は第3四半期の決算発表シーズンに突入しており、1番バッターとしてアルコア(ティッカーシンボル:AA)が決算を発表しました。それが予想に届かなかったので、アルコア株はザラバ-10%も売られました。加えて昨夜はイルミナ(ティッカーシンボル:ILMN -26%)が利益警告をしています。

こうした決算絡みの不安というのも、もちろんあるわけですが、それにも増して注目されているのは、このところのヒタヒタとした長期金利の上昇です。

先週発表されたISM非製造業景況指数に代表されるように、米国経済が底堅い事、欧州で景況感が上向いている事から(そろそろECBもテーパーリングを考えた方が良いのでは?)という議論が出ていることなどがその背景にあります。

テーパーリングとは、量的緩和政策の一環として中央銀行が新規に買い入れる購入額をだんだん減額することを指します。

アメリカの場合、2008年11月から量的緩和政策(QE)が開始されたわけですが、2013年5月22日に、景気が上向いたことを背景に、バーナンキ議長が下院での証言に際し「債券買入れ額の縮小を始める用意がある」と述べました。

さらにダメ押しするように6月19日の連邦公開市場委員会(FOMC)の記者会見で「今年の後半にテーパーを開始するのが適当だ」と述べたことから債券が急落(利回りは2.20%から2.30%へ)しました。同様に株式も売られました。

この一連の動きが、のちに「テーパー・タントラム(癇癪)」と呼ばれる市場のかく乱だったわけです。

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今回、テーパーが検討されているのは欧州市場なので(アメリカは、カンケーないんじゃないの?)と思う読者も居るでしょう。

しかしこのところの米国の債券のラリーは「日本や欧州ではどこもマイナス金利だ。だからそれらの国の投資家は、より有利な利回りを求めて、米国財務省証券を買いに来る」というロジックに支えられてきました。

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ドイツ10年債の利回りは「欧州版テーパー」の議論を背景にマイナス金利がプラス金利に戻っており、投資資金が逆流する可能性も出てきているわけです。

さらに10月14日からマネー・マーケット・ファンド(MMF=短期の公社債投信)のルールが変更になり、これらの公社債投信は流動性バッファーを設けることが義務付けられる上、有事には解約請求に応じなくても良くなります。

これを受けてMMFの人気が薄れ、MMFへの資金の流入が細ったため、銀行は従来のように譲渡性預金(CD)やコマーシャル・ペーパー(CP)をホイホイ買ってもらえなくなったわけです。

このため銀行はそれ以外の短期資金の調達経路の模索を迫られ、それがLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の上昇を招いています。

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今回のMMFを巡るルール改正は、有事の際の金融システムの耐性を強化するための措置であり、望ましい改革です。

しかしその副作用としてLIBORが上昇し、あたかも「銀行が、相互不信に陥っている?」ように受け止められかねない、誤ったシグナルを送る結果になっているわけです。

これは事情に詳しい市場参加者なら、そういう勘違いは犯さないと思うので、僕は余り心配していませんが、新ルールがキックインするまであと2日しかないので、注意する必要があるでしょう。