銀行に入行した若手社員から時折受ける質問に、次のようなものがあります。

銀行って売上高という概念は、無いんですよね?


そうです。

これはなぜかといえば、銀行はメーカーのようにモノを作って売っているわけではないので、通常、我々がイメージするような「売上高」は、ありません。

でも四半期の決算発表で「売上高」って、ちゃんとかいてあるじゃないですか!


そうです。その際の「売上高」とは、「純金利収入(Net Interest Income)」と「非金利収入(Non-interest Income)」のふたつを合計したものです。

おっと、突然、話が難しくなりました。

説明します。

「純金利収入」とは、お金を貸す、あるいは運用することで得る、利益を指します。よく「お金がお金を生む」と言いますが、銀行の商売のタネはお金です。

だからお金を元手として、それを投資することにより、大きくするわけです。

(この人は、信用できそうだな。それじゃ、この人に投資してみよう)というカタチでお金を貸すのは「融資」ですが、これも銀行の目線から言えば、広義の投資に他なりません。

同様に(この国は、信用できそうだな。それじゃ、この国の債券に投資してみよう)というカタチで投資することもします。

さて、さきほど「お金を元手として……」と言いましたが、銀行の場合、元手になるお金の大部分は「コストのあるお金」です。別の表現をすれば「どこかから、引っ張ってきたお金」と言い直しても良いでしょう。

つまり、自分のお金じゃない! ということ。

つまり他人のお金を借りてきて、それを別の他人に貸す、ないしは投資する……そういう「右から左にお金を動かすことで儲ける」というのが銀行業の極意なわけです。

ここで他人から借りてくるお金、その「借り賃」が調達コストです。そういう言い方でわからなければ、「鮨屋の材料の仕入れ値だ」くらいに思ってください。

具体的にはみなさんが銀行の普通預金口座に預けているお金……そこに利子がつきますよね?、普通なら。 (いまは低金利時代ですから、利子なんてゼロに限りなく近いですが)

その、限りなくゼロに近い利子こそが銀行の「仕入コスト」です。

さて、そういう風にしてかき集めたお金を、次に融資するわけです。その際、貸付けるお金の金利は、仕入の時の金利より、もっと高い金利を要求します。すると自分のコストより高い金利を得られれば、両者の差額が銀行の儲けになるわけです。この「差」が、純金利マージンというわけです。

純金利マージン=貸付け・運用金利-調達金利


普通、銀行は短期で資金を調達し、それを長期に貸付けます。たとえばみなさんが銀行口座を開けるとき、普通預金口座はいつでもおろせるのがキホンだから、みなさんは短期で銀行にお金を貸している(!)ということになるのです。

一般論では、短期の取引の金利は低いです。

一方、銀行からお金を借り入れてビルを建てる……という場合、ビルは一日では建たないので、どうしても貸付けは長期になります。長期での貸付はリスクが伴うので、それに見合った高い金利を要求するのが普通です。

いまイヴァンカちゃんが「こんどホワイトハウスのすぐ近くに古い郵便局の建物を改装して、ラグジャリー・ホテルを建てるの。これは流行ると思うわ。だから…お金、融資してくれる?」と言ってきたとします。

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するとドイツ銀行の担当者は、「ほー、そりゃ耳寄りな話だ。これは詳らかにその事業計画を伺いたいので、お洒落なレストランでディナーしながら、ゆっくり話を聞きましょう」とかなんとか言って誘い出すわけです。

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こうして銀行は短期で仕入れたおカネを長期で貸し付ける。これが銀行業の「マジック(魔術)」であり、「お金がお金を生む」からくりというわけです。

しかし、上で説明した金利差がどんどん小さくなると、銀行の利益は小さくなるうえ、下手すれば逆ザヤというリスクすら出ます。

この金利差のひとつの指標が、10年債利回りから2年債利回りを引き算した数字になります。最近の金利差は、下のチャートのように推移しています。

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このところ、チャートは底打ちからだんだん上昇しているのがわかります。これは銀行にとって嬉しい展開です。

さて、「純金利収入」がわかったところで、「非金利収入」とは何か? ということですが、これはM&Aのアドバイス・フィー、株式引受け手数料などを指します。

リーマンショックこのかた、銀行業には逆風が吹いていました。不景気でデフレだったからです。しかし最近、ようやくアメリカ、英国、EUではインフレになり始めています。

またリーマンショックをひきおこした銀行を懲らしめる、ドッド・フランク法という法律も銀行のビジネスをやりにくくしていました。

しかし来年の1月に大統領に就任するドナルド・トランプは「経済を元気にするためには、銀行に活躍してもらわないとダメだろう」と、ドッド・フランク法を緩める姿勢を見せています。

つまり銀行業をめぐる環境は、「フォローの風」になりはじめているのです。

銘柄ですか?

やっぱり世界No.1のJPモルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)が一番良いと思います。

もっとクネクネした銀行ないの? という火遊び好きの方にはドイツ銀行(ティッカーシンボル:DB)がねらい目でしょう。