イタリアのモンテ・デ・パスキ銀行は、不良債権を抱えており、経営危機に瀕しています。

しかし同行はこれまで、手をこまねいて、リストラクチャリングの努力を怠ってきました。

欧州中央銀行(ECB)は「12月末までに資本再構成を完了するように」と要求してきました。

具体的には:

1)50億ユーロの増資
2)デット・フォー・エクイティー・スワップの実行
3)280億ユーロにのぼる焦げ付き融資の処理


です。

これに対し、モンテ・デ・パスキ側は「1月20日まで延長して欲しい」とリクエストしていました。今日、ECBは、「それは出来ない」とこの要請を却下しました。

なぜ12月末の期限ではモンテ・デ・パスキ側がダメなのか? その理由はカタール政府やJPモルガン・チェースなど、民間企業からの資本注入の交渉が、上手く行っていないからなのではないか? と、僕は考えます。

すると、倒産を回避するためには、イタリア政府が直接、モンテ・デ・パスキに資本注入することになります。

まず、その行為はEU憲法違反です。(たぶん欧州委員会は、背に腹は代えられないので、OKするでしょう)

つぎにイタリア政府がモンテ・デ・パスキに資本注入したら、自動的にジュニア・デット(劣後債務)の保有者は、ヘアカット、つまり評価の減価を強いられます。

モンテ・デ・パスキのジュニア・デットは、個人投資家にポピュラーな商品です。

だからモンテ・デ・パスキ債が大幅なヘアカットをこうむったら、個人の預金者は「あそこは危ない!」ということになり、預金を引き出し始めるリスクがあります。

つまり取り付け騒ぎです。

ECBに話を戻すと、資本注入の決断はドラギ総裁に一任されているのではなく、ECBのボードメンバーの合議によります。

つまり機動力に欠けるということです。

既にモンテ・デ・パスキの取締役会は、今、緊急に招集がかかっています。

今週末、イタリア政府から、なんらかの布告(decree)が出る可能性があります。

市場関係者が(未だ、とうぶん来ないだろう)と思っていた「終末」が、突然、繰り上がってやってきそうな雰囲気なのです。