ドナルド・トランプ大統領は選挙戦の期間を通じて「自分が大統領になったら、まずアフォーダブル・ケア・アクトをやめる」と公約しました。

アフォーダブル・ケア・アクトとは、オバマケアの正式名称です。

しかしトランプが大統領になってから、実際にオバマケアを止めようとすると、事態はそんなにカンタンではないことが判明しました。

まずいまとつぜんオバマケアをやめてしまうとトランプ大統領のコア・サポーターである低所得者層が大きな打撃を受け、4年後の再選が難しくなることがわかってきました。

すると既にオバマケアに参加している国民のカバレッジを絶やすことなく、新しいプランに置き換えてやる必要があるわけです。

この代替案はなかなか骨子が固まらないのですが、ようやく輪郭が見えてきました。それはブロック・グラント(一括補助金)を利用した新プランの採用です。

一体、ブロック・グラントとは何か?

これを説明するには、まず現在のオバマケアがどのような仕組みで低所得者層にカバレッジを広げていったか? の仕組みを説明する必要があります。

アメリカの公的医療保険制度にはメディケアとメディケイドがあります。このうちメディケアは65歳以上の老人を対象とした公的医療保険制度です。メディケイドは低所得者層、とりわけ子供、妊婦、扶養家族がいる親などが対象です。

オバマケアは、既に存在するメディケイドを連邦政府の資金でパワー・アップすることでカバレッジを広げました。

メディケイドは各州政府により運営されています。したがってメディケイドに幾らの予算を割くか? ということは、それぞれの州政府が独自に決めます。そうして州政府が公的医療保険に費やした費用とおなじ金額を、連邦政府がマッチングすることで予算を2倍にし、より沢山の人がメディケイドに入れるようにしているのです。

アフォーダブル・ケア・アクトにより現在ではいわゆる「貧困ライン」より138%上の家族、言い換えれば年間所得で2万8千ドルを上限とする低所得者層もメディケイドに参加できるようになりました。

これで2013年以降、新たに1100万人が医療保険の恩恵をこうむることが出来たのです。

アフォーダブル・ケア・アクトに参加するかどうか? という判断は、各州にゆだねられており、現在、31州がオプト・イン(=自ら進んで参加すること)しています。

これまでのやり方では、まず州政府が使ったお金を連邦政府に報告し、それを連邦政府が「つかった分だけマッチング」しました。

これに対して現在共和党が温めている改革案ではまずブロック・グラント(一括補助金)というカタチで連邦政府が州政府にお金を渡し、州政府はその中からやりくりしてプランを運営するというものです。もし不足分が出た場合、一定の算式に基づいて連邦政府がそれを穴埋めします。

これだと州政府も責任をもってメディケイドのコストを管理しなくてはいけなくなります。また連邦政府負担分の金額が予め大方確定できるので、政府の予算策定プロセスを容易にするという効用もあります。

いずれにせよ、これまで漂流していたアフォーダブル・ケア・アクトの改変が、いよいよ動き出そうとしています。これは「早く税制改革の審議に取り掛かって欲しい!」と切望する投資コミュニティにとっては朗報だと思います。

なぜなら税制改革法案を通過させるためには、まず予算を策定する必要があり、予算案を可決するためにはアフォーダブル・ケア・アクトの改変のコストが確定する必要があるからです。