ウォールストリート・ジャーナルの伝えるところによると、殿は心変わりをされたようです。

「オレはもう交渉し尽くした。これ以上、やることは無い。もし金曜日の投票で下院共和党ヘルスケア・プラン(AHCA)が否決されるのであれば、そのときはオバマケアで行こうや」

この発言を受けて、金曜日は下院で強行採決となる見込みです。

さて、このトランプ発言が意味するところは何なのでしょうか?

まずAHCAを投票に付したことで、トランプ自身は「おれは、支持者への公約は果たした。悪いのは共和党議員の方だ!」と責任をなすりつけることができます

ヘルスケア法案は、1)加入者をもっと拡充する、2)その一方で国民の医療保険負担は減らす、という、ほんらい矛盾する二つの目的を充足させようとする無理ゲー的な法案です。

だから、そもそも選挙期間中に「オバマケアは悪法だからオレが大統領になったら変えてやる!」と軽々しく約束してしまったのがまずかったわけで、勝ち目のない戦(いくさ)に、いつまでも拘泥していてはいけません。

だからトランプは、金融クラスタ風に言えば「サクサク損切り」したわけです

これは一瞬の恥だけど、中期的にみればトランプ政権が動きやすくなります。

その理由は、オバマケアをそのままにするならば、すぐに予算審議に移れるからです。

この部分は大事なメカニズムなので、きちんと説明しておきます。

トランプ大統領、ならびに下院共和党議員たちがいちばんやりたいことは税制改革です。そしてそれはウォール街が望んでいることでもあります。

なぜなら税制改革は30年に一度、起きるか? 起きないか? という大イベントだし、トランプ減税案は5兆ドルもの減税を見込んでいます。

それはキョーレツに景気刺激的であり、金利上昇要因であり、ドル高要因です。

だから投資家はそれに期待してポジションをとってきたわけです。

しかし税制改革法案は重要案件なので、上院で、いわゆるスーパー・マジョリティーという定数100に対し60票の賛成を必要とします。

現在、共和党は上院で52議席を占めるのみで、60には到底、達しません。

するとリコンシリエーションという「裏口」の方法で法案を成立させる必要があります。

その条件として「リコンシリエーションを使うなら、まず連邦政府予算を成立させなさい」というのが課せられているのです。

連邦政府予算を立てる上で、ヘルスケアコストは大きな支出項目になります。するとヘルスケアコストが固定できなければ、予算も立てられないということになるのです。

だから「オレが大統領になったら、オバマケアを葬り去る!」と高らかに宣言したことを、トランプ大統領は後悔しているのです。

「負け」は、認めてしまえば逆にチカラになります。オバマケアが継続されるのであれば、ヘルスケアコストは固定できるのだから、予算も立てられます。

今日の票決が「NO」でも、はいサヨナラ!で次へ行ける……それが、株式市場の望んでいる事なのです。

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そうか、トランプの言う「交渉術(The Art of the Deal)」とは、身内の共和党員を裏切るということなのねwww

アート・オブ・ザ・ディール、炸裂ぅ!

Trump_the_art_of_the_deal