アメリカがトランプ大統領の下、経済ナショナリズムに舵を切っています。

トランプ大統領の経済ナショナリズムとは、全てにおいてアメリカの労働者を優先するために、外国製品に高い関税をかけ、移民を制限することで国内労働者の職を守り、公共工事を行うことで雇用を創出するなどの政策を指します。

経済ナショナリズムという概念を考えだし、指揮しているのはスティーブン・バノン合衆国首席戦略官です。

バノンは、1830年代に活躍したアンドリュー・ジャクソン大統領の采配にインスピレーションを受けています。

アンドリュー・ジャクソンは資本主義の持つ冷酷な側面に気がついた最初の指導者のひとりです。

当時のアメリカは、産業革命により庶民、とりわけ職人たちの暮らしが脅威に晒されていました

1830年頃から、白人労働者階級の間で、ミンストレル・ショーと呼ばれるコメディー・ショーが人気を博しました。

ミンストレル・ショーでは、白人コメディアンが顔を黒く塗り、黒人に扮し、黒人の無知やオツムの弱さを風刺し、人気を取りました。

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これは単なる人種偏見のショーとしてスタートしたのですが、「ブラックマスク」と呼ばれるこれらのコメディアンは、黒人に扮装することで、自分のホンネを、黒人の言葉として代弁させることで吐露することが出来ました

当時の大衆は、産業革命による就業構造の変化で、将来の生活への不安を感じていました。言い直せば、資本家と庶民の対立構造が、だんだん認識されるようになったのです。

白人労働者階級はブラックマスクのパフォーマンスを通じて「自分たちの境遇は、奴隷たちとさして変わらない!」ということを悟ったのです。

ブラックマスクはアンドリュー・ジャクソン大統領を、彼らの過酷な境遇から救い出してくれる救世主と位置付け、ジャクソン支持を訴えました。これがいわゆる「ジャクソン流ポピュリズム」となったのです。

アンドリュー・ジャクソンは、民衆の声に応え、当時のアメリカの中央銀行だった第二合衆国銀行(=こんにちのFRBに相当)を資本家の横暴の象徴だとして閉鎖しました。

Bank-War

スティーブン・バノンが政治経験に乏しいにもかかわらずトランプ大統領から重用されている理由は、アメリカの白人低教育低所得者層が感じている閉塞感を敏感に感じ取り、それを政策に反映させるという点においてバノンが天才的なひらめきを持っているからです。

そのスティーブン・バノンは、ワシントンDCのエスタブリッシュメントが大嫌いです。

だからエスタブリッシュメントの代表的な存在であるポール・ライアン下院議長も当初は目の敵にしていました。

しかし、ポール・ライアンが提唱している国境税調整が、バノンの考える経済ナショナリズムを実行に移すにあたって、具体的な行動の指針を提供していることに気付きました。

したがって今後、下院共和党税制改革法案とトランプ減税法案は、歩み寄りを見せる可能性があります

国境税調整はロビイストや共和党の裕福な献金者たちに不評です。関税を法人税とセットにすることで国内産業を保護するやり方は他国では例がありませんし、それはWTOの規定に抵触すると思われます。

共和党財政保守派、フリーダム・コーカスはそのような理由から(国境税調整は共和党の面々から支持されないだろう)と読んでいます。

だからちょうど下院共和党ヘルスケア・プランでトランプ大統領とフリーダム・コーカスが激突したのと同様、税制改革においてもバノンの考えとフリーダム・コーカスの一派は、するどい対立を見せるものと予想されます。


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