先日、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが「ビットコインは詐欺だ。死人が出るだろう。ウチのトレーダーで、ビットコインやっている奴を見つけたら、即、クビにする」と発言し、仮想通貨が急落しました。

今後も、仮想通貨に対するネガティブ・コメントは、増えることはあっても、減ることは無いでしょう。

それを説明します。

ビットコインはドライな通貨です。その意味は「コンピュータのみ」で処理されるということです。

これに対して、こんにち我々が銀行などで行っている金融取引の多くはウエットです。その意味は「人間の手を介在する」ということです。

するとビットコインのようなブロックチェーン技術に基づいた仮想通貨が普及すると、ウエットな仕事に従事している多くの金融関係者が失職すると予想されます。

これまでは、JPモルガン・チェースのような金融機関が「安心できる取引」を保証する存在でした。

そういう安心感を醸し出すために、金融機関はインフラに投資し、ブランドをはぐくんできたわけです。

そうした既存のシステムが、ちょうど有人改札の切符切りのおじさんのように、お払い箱になるリスクが出ているのです。

ブロックチェーン技術では、安心感の根拠となるのは、コンピュータによるプルーフ・オブ・ワーク(検証作業)です。

言い換えればマイニングによる「品質保証」に相当することを、これまでは24万人のJPモルガン・チェースの従業員が、手作業でやってきたのだと思えば良いでしょう。

もちろん金融機関はJPモルガン・チェースだけじゃないので、仮想通貨が普及すれば100万人を超える金融関係者がお払い箱になるリスクがあるわけです。

それでは「コンピュータが勝つに決まっているから、勝負はもうついている」のでしょうか?

それは、そうとは限りません。

なるほどブロックチェーン技術はエレガントです。

しかし、たんに技術が優れているからと言って、それが大衆に広く浸透するとは限りません。

ブロックチェーン技術擁護派の主張は、紙幣の偽造防止技術の仔細だけに注目し、そもそもその紙幣がリーガル・テンダー(法定通貨)として認められていない事実を軽く見すぎです。

「この偽札防止技術はホログラムも、潜像パターンも、特殊発行インクも採用されているから、ゼッタイ偽造できない!」

といくら主張してみても、そもそもその紙幣そのものがリーガル・テンダーでなければ、その価値は国家権力によってギャランティーされてないわけで。

もちろん、すべての通貨がリーガル・テンダーである必要はありません。発展途上国などでは複数の通貨が併用されることはザラにあります。

ただ、その場合、「通貨」と言うからには、それで買い物をしたり、家賃を払ったりすることが出来なければいけないのです。

つまり「円は気に入らないから、僕は仮想通貨だけで生活する!」と宣言しても、あらゆるところで仮想通貨で支払いを済ませることが出来なければ、「円の無い生活」は長続きしません。

実は「リーガル」、つまり「法定」の部分が、既存の金融機関が仮想通貨に対して反撃できる「恐ろしい飛び道具」なのです。

ブロックチェーン技術が普及し、ビットコインに関心を持つ人が増えれば増えるほど、次の「主戦場」は技術談義からリーガル・フレームワークへと移って行きます。

金融機関の連中は、法制度を盾にしたダーティーなバトルでは百戦錬磨です。

だからそれを甘く見ると、足元をすくわれます。


簡単にまとめると、仮想通貨と既存金融秩序のエピックなバトルは、幕が切って落とされたばかりです。

あなたが金融マンなら、5年後、10年後の生活のために、今からでも遅くないので急いで仮想通貨の勉強をするべき。

あなたが仮想通貨のファンなら、少しは金融の勉強をしたほうがいい。

現状では、仮想通貨は法定通貨ではありません。そのことは、仮想通貨の価格の維持は、ビットコイン取引所やウォレット企業の営業を、見てみぬフリをする「お目こぼし」によって、かろうじて存在を許されているだけに過ぎないのです。

僕ですか?

僕は今日の文脈では「切符切りおじさん」に属する人種です。

でも「役職定年ジジイ」みたいになるのはイヤですから、当然、世の中が仮想通貨の方へシフトしても大丈夫なように準備は怠っていません。

「広瀬ってヤツは、何でビットコインやVALUで消耗してるんだ? 痛いヤツだな」

そういう批判があることはわかっています。

でも僕から言わしてもらえば、未来がどう転ぶかわからないのに、皆さんは、なぜ「ヘッジする」という発想をしないのか? そこらへんが理解できないのです。 

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