COMSAとCAMPFIREがICOを巡って言い争いをしています。

COMSAとは、世界初の、「ICOのベストプラクティスをパッケージ化したサービス」です。そこではICOにまつわる法務面でのキー・ポイントをしっかりおさえて、現状で、最も手堅い法解釈の下で、ICOを正しく実行する指導を受けることが出来ます。ICOの発行、預託、トレードに際しては、ビットコイン、イーサリアム、NEMなどのパブリック・ブロックチェーンとペグすることができるし、さらにはZaif取引所を経由することで米ドル、日本円などの法定通貨との交換も出来ます。つまりICO発行者にとって、いちいち頭痛のタネとなる、様々なハードルをCOMSAというソリューションを利用することで一気に超えることを狙うわけです。

CAMPFIREはクラウドファンディングの会社です。

CAMPFIREがCOMSAソリューションを使ってICOしようとしたということは、CAMPFIREはCOMSAのクライアント(顧客)の立場であったと、僕は理解します。

COMSAを運営しているテックビューロがCOMSAソリューションを8月に発表したとき、今手掛けている案件のひとつとしてCAMPFIREに言及しました。

双方の見解については下の記事がよくまとめてあるので、それを読んでください。

暗号通貨 仮想通貨 - Zaif板まとめ 株式会社CAMPFIRE COMSA ICO事件について

僕がこの記事を読んだ印象について書きます。

まず「テックビューロの見解」で、目をひいたのは:

弊社代表者からホワイトペーパー完成の催促をしたところ、それに対してもその場でするという返答を頂いております。(中略)
その後10月2日のトークンセールが迫るにつれ、両者の関係や時間的な問題など、様々なスケジュールを加味した上で割り出した結論からは、ホワイトペーパーやウェブに公開されたスケジュールに従ったICO実施をすることは困難となったため、ICOの引受けをこちらからお断りすることとしました。


という点です。

僕はこの部分に関してはCOMSA側に同情します。期日までに、ちゃんとホワイトペーパーが提出できないとなると、そもそもICOのベストプラクティスを行う事ができなくなるので、それをCOMSA側が憂慮し、結果としてCAMPFIREに「ICOの引受けをお断りします」と言い渡すのは、苦渋の決断だと思うけど、正しい判断です。

「キャンプファイアー側の見解」で、目をひいたのは:

2017年9月15日に、一切の前置きなく「仮想通貨取引所システムのOEM提供を同月30日に終了させる」との通達をTB社から受け、同月14日にも「COMSA上でのICOの実施を前提とした業務提携を解消する」との一方的な通知を受け、同社はCOMSA上でのICOの実施を中止せざるを得ない状況となりました。


という点です。特に日付に注目してください。

つまり両社の関係は、既に9月14日頃に暗礁に乗り上げていたにもかかわらず、その事実を一般に開示しなかったのです。それどころか、この重要な進展を「握りつぶそうとした」疑いがあります。「テックビューロ側の見解」の中では、次のような記述があります:

とはいえ安易で詳細を欠いたICO中止の発表はCOMSA利用の皆様に多大な混乱を来すことが予想されます。従って弊社代表者は、CAMPFIRE社の代表者と担当者に対し、明確な発表内容を双方で協議の上、共通の声明として公開することを提案させて頂いておりましたが、その甲斐もなく、CAMPFIRE社は、2017年9月29日に事前に20分前の予告を以て以下のような発表を出されました。(以下略)



問題はCOMSAそのもののICOプリセールという資金調達イベントが、上記のゴタゴタの間も進行中であり、結果としてCOMSAのICOプリセールへの投資家は、事情を知らされず、「蚊帳の外」に置かれたまま、応募せざるを得なかったという点です。

まとめると、今回はCAMPFIRE、COMSA双方の、「ボタンの掛け違い」というか、イザコザがありました。ついでに言えば、この程度のゴタゴタは、株式の引受けでは日常茶飯事であり、主幹事証券と発行体企業の間では普通、火花が散るものです。

だから僕は「どっちが悪い」と決め付けることに興味は無いですし、たぶん両方に落ち度があったと思います。

しかし……

そのようなゴタゴタがおこっているにもかかわらず、それを隠ぺいし、COMSA自身は「しれっ」と自分の資金調達を実行している……この部分は、どうにも言い逃れできないように思うのです。

COMSAは、いわば仮想通貨でのゴールドマン・サックスを目指しているのだから、投資銀行なら引き受け実績が無ければ意味ないです。

しかしCAMPFIREとプレミアムウォーターという、COMSAの実績を誇示するはずだった案件が両方とも立ち消えになり、実績ゼロになったにもかかわらず、その不都合な事実を投資家に伝えず、自分だけは資金調達してしまったのは、言い逃れは出来ません。


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