イーサリアムはビットコインに次いで二番目に時価総額が大きい仮想通貨です。またその構造が柔軟なので、ビットコインより色々な用途に使える可能性があり、その意味で重要です。

仮想通貨にはプログラミングする余地がありますが、ビットコインの場合、「カシオ電算機」くらいの使い方しか出来ない一方で、イーサリアムは最初の個人向け汎用パソコン「アップルⅡ」みたいにフレキシブルです。

ライトコイン、ドージコインなどのアルトコインが、ビットコインがそもそもオープン・ソース・ソフトウェアとして開発され、誰にでも改善できることを利用し、ビットコインの「発展型」として開発されたのに対し、イーサリアムはビットコインとはまったく別個の仮想通貨である点には注意を払う必要があると思います。

トランザクションにアイデンティファイヤーやアドレスを付加し、フレキシビリティーを持たせるということは、逆に言えばハッカーからのアタックにそれだけ晒されやすいことを意味するので、一般にはイーサリアムのセキュリティーはビットコインより堅牢では無いと考えられています。

ブロックチェーン上でのイノベーションの多くが、イーサリアムをベースにして試行されているのはその柔軟性のためです。

いわゆる「スマート・コントラクト」と呼ばれる約束事を、トランザクションの条件として予めプログラムすることも出来ます。

それは「IF__, THEN__」という条件付けになります。たとえば「もし(IF)順子が飛行機で飛び、目的地に予定どおり着けなかった場合、もし(IF)それが航空会社の責任なら、そのときは(THEN)航空会社が補償金を払う…」などのアクションを予めプログラムし、自動化するわけです。このような条件付けは自動販売機にたとえられます。

イーサリアムを開発したのはヴィタリック・ブテリンで、彼はロシア生まれカナダ育ちです。

ペイパルの創業者のひとり、ピーター・ティールが、そのフェローシップ・プログラムを通じてヴィタリックのイーサリアム・プロジェクトを支援したことで、イーサリアムに箔が付きました。そして2014年9月にスイス籍のイーサリアム基金がプリセールを実施、1800万ドルを調達しました。このプリセールはイノベーティブかつ大規模だったので、以後のプリセールのひとつの雛形を作ったと言えます。

イーサリアム上で開発されたソフトウェアはdApps(decentralized applications=「ダップス」)と呼ばれます。「アプコイン」、「クリプト・トークン」、「トークン」はdAppsに依拠しています。

ビットトレード

dAppsによるいろいろなイノベーションを支援するために計画されたThe DAO(The Decentralized autonomous organization)という組織は、いわばdAppsのベンチャー・キャピタル・ファンドを目指していました。

しかしThe DAOのソフトウェアには脆弱性があり、それを突いたハッカーが、The DAOの調達した資金の3分の1を盗むという事件が発生しました。

The DAOにはヴィタリック自身も関与していたため、The DAOの失敗がイーサリアム自体のクレディビリティーに影響する事態となりました。

ソフトウェア・アップグレードによりハッカーが手中に収めたイーサリアムを「無効」とする措置が検討されました。これは「ハードフォーク」と呼ばれる改変のひとつです。

これはおカネを盗まれた側の立場からすれば当然の原状復帰措置ですが、仮想通貨がその四つの特徴である:

1. 分散型であること(distributed)
2. 暗号を使っている事(Cryptographic)
3. 改ざんできないこと(Immutable)
4. つねに検証を伴うこと(Proof-of-Work)


のうち3.のImmutableの原則を自ら破ってしまうというジレンマを提示したことになります。

しかもこの「無効」宣言が、The DAO、ひいてはそれにアドミニストレーターとして関与していたヴィタリック自身から出たことで、「やっていることが中央集権的じゃないか!」という批判が出ました。

この賛否両論で意見が紛糾(contentious)する中で「ハードフォーク」が強行されたことは、その後の仮想通貨の改良・改善の在り方、もっといえば「ハードフォーク」が、いとも気軽に計画されるひとつの原因を作ったと言えるかもしれません。

まとめると、イーサリアムは、まるで「アップルⅡ」のような汎用性を具備しているので、今後の仮想通貨のイノベーションの中心となる存在です。しかし汎用性を強調することは堅牢性を犠牲にしたことを意味し、ハッカーからアタックされやすい仮想通貨であると言えます。実際、The DAO事件では中央集権的な決断で、みずからImmutabilityの原則を破ったことで、これは「原罪」の如く、イーサリアムに影を落としています。

【ビットコインの基礎シリーズ】 第1回 ビットコインが生まれた背景について

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【ビットコインの基礎シリーズ】 第3回 FANGとビットコインはどちらが優れた投資対象か?

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