ビットコイン価格が1万ドルの大台に乗せました。

これは単なる通過点に過ぎません。仮想通貨のブームは、始まったばかりで、まだまだこれからワクワクするようなことは幾つも出てくるでしょう。

「広瀬さん、ドットコム・ブームって、どんな感じだったのですか?」


時々、若い人にそう聞かれます。僕は1990年代のドットコム・ブームを経験したけれど、あれ以来、17年ぶりに、往時に匹敵する興奮と熱気を、いま感じています。

その経験から言わしてもらえば、いまは、「仮想通貨で何ができる?」ということに関し、デッカイことを考えるべきときです。つまりビジョンを持て!ということ。

そういうと「ビジョンなら、もう持っている!」と反論が来そうですね。でも「ビットコインは将来10万ドルになる!」とか「トラストレスの価値の交換が……」とか、そんなもん、ビジョンじゃありません!

イノベーションのライフサイクルから言えば、いまはインスタレーション・ピリオドです。

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(出典:Technological Revolution and Financial Capital, Carlota Perez)

それは、平たい言葉で言えば、仮想通貨が我々の暮らしに浸透するための、さまざまな基盤を整備すべき時です。それはハードウェア、ソフトウェアにとどまらず、ルールを決めることも含まれます。

現在の仮想通貨経済圏は、図示すると下のようになります。

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つまり仮想通貨経済圏の価値の大部分は仮想通貨そのものによって体現されており、仮想通貨の周りに形成されている付帯サービスの経済は小さいということです。

これはインスタレーション・ピリオドに特有の現象で、たとえば株式市場でもドットコム・ブーム初期に人気を博した銘柄は光ファイバー部品のJDSユニフェイズ、ルーターのシスコ・システムズ、サーバのサンマイクロシステムズのような企業でした。

しかし、ひとたびインスタレーション・ピリオドが終わり、次にその新技術が大きく開花するデベロップメント・ピリオドでは、周辺サービス経済のほうが「新しい社会基盤」である仮想通貨そのものより遥かに大きくなります。

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一例として、こんにちのフェイスブック、アマゾン、ネットフリックスなどは、インターネットという社会基盤を構成する光ファイバー網やルーターやサーバなどとは比べ物にならないほど大きな「ビッグ・ビジネス」なのです。

アメリカは、ドットコム・ブームのとき、見境のない過剰投資を行い、その結末としてバブル崩壊を経験しました。これは苦い経験です。しかしそのときに蓄えられた有り余るインフラストラクチャとノウハウがあったからこそ後日、こんにちのような豊かなサービス・レイヤーを構築することが出来たわけで、避けて通れない道だと考えるべきです。

さて、インスタレーション・ピリオドは「新しい社会基盤」を整備するステージだと言いましたが、それは「使いにくい新技術の至らないところを、あれこれ手直しすることで、何とか使用に耐えるようにする」ことに他なりません。

ドットコム・ブーム当時を振り返れば、「24/7(=トウェンティー・フォー・バイ・セブン、つまり昼夜を問わずいつもネットへの接続を絶やさないこと)」、「レイテンシー(=遅延)」、「セキュリティ」などが業界人の頭を悩ませる大問題でした。

仮想通貨も、いまは「日常生活の使用に耐えられない」様々な問題を孕んでいます。それを改善するのは更なるハッシュ・パワーの投入かもしれないし、フォークによる改善かも知れません。

それと同時に、ルールの問題、言い換えれば「テクノロジーは誰のもので、それを守るためには何をしなければいけないか?」を真剣に考えるときが来ているのです。

幸い、ドットコム・ブーム当時の関係者は「ネットは万人のためのものであり、何人も機会平等にその恩恵に浴する権利がある」と考えました。つまりdreaming big=大きなビジョンを描いていたのです!

このようなinclusive(だれでも仲間にまぜてあげる)な態度は、単にルールやテクノロジーにとどまりません。技術に明るくない人でも、だれでもカンタンにそれを楽しめるように、どんどんユーザー・フレンドリーにすることも大事な視点です。

その点、今日の仮想通貨クラスタには、へんな優越感みたいなものがあり、非コーダーを「外部者」と見做すような、ケツの穴が小さい者が散見されます。

先輩から言わしてもらうと、僕たちはそんな狭隘な考え方はしませんでした。

それが証拠に、我々は誰でもネット・サーフィンができるように、無料のディスクをアメリカ中に郵送し、こども、おじいちゃん、おばあちゃんなど、みんながネットを楽しめるようブームへの参加を促したのです!

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さて、ブームの真只中では、どの会社やサービスがホンモノで、どれがニセモノかを見抜くのは至難の業です。手軽に荒稼ぎできるので、中には変な奴も出てきます。

たとえばドットコム・ブームのとき、僕が勤めていた投資銀行が主幹事を務めたUSウェブという会社がありました。

あれは毎年正月にサンフランシスコのユニオン・スクエアに面したセントフランシス・ホテルで開催されるオフサイト(幹部による経営戦略会議)での出来事です。誰かが朝刊を広げて「おい、たいへんなことになっている!」と叫びました。USウェブのCEO、ジョー・ファーメージが記者の取材に応えて「私は宇宙人と交感した。これからは宇宙人との交信を試みるため、それに専念する」と宣言したのです。

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「なんだいこりゃ? するってえと、ジョーは火星人にオカマ掘られたのか!?」


その年の経営目標を決める会議が、騒然となりました。

そしてそれは責任のなすり合いに急変しました。

「なぜこんな気違いが経営する会社の株など引き受けたのだ!」


営業部員たちは担当法人マンに詰め寄り、危うく殴り合いの喧嘩になるところでした。

USウェブのスキャンダルはドットコム・ブームの火を消す原因にはなりませんでしたが、その後、エンロン事件という不正会計事件が発覚し、ドットコム株に対する投資熱が完全に冷めたことを覚えている人は少ないと思います。

このような事件が起きると「監督当局は何をやっている!」という批判が出るのが常です。

しかしテクノロジーは初めから規制によりがんじがらめに律せられるべきではなく、むしろ市場原理や業界関係者の切磋琢磨により劣悪な行為者が自然淘汰されるべきです。


当時、我々もGet rich quickしか考えてない邪道な経営者には日頃から神経を尖らせていましたが、そういう風に普段から注意していても不届き者は必ず出てきます。

その点、こんにちのICOブームでは仮想通貨界はbad actorに対するピア・グループの監視がぬるいです。うすうす詐欺に気がついていても、見てみぬフリをするコーダーたちが後を絶ちません。

技術のことをわかっていて詐欺を見抜ける筈のコーダーたちが、自治できないのなら、「なにもわかっていない」監督当局に規制を設けることを委ねたほうがマシです。

つまりテッキーたちは「大人になれ!」ということ。

仮想通貨クラスタの諸君、未来はきみたちのものだ! Don’t fuck it up!



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