ミールキットとは野菜や肉などの新鮮な食材を調理の手引きとともに宅配するサービスを指します。

米国の食料品店の年間売上高は6300億ドルで、これはとても大きな市場です。

アマゾンにとって生鮮食料品が魅力的な理由は、市場の大きさに加えて頻繁に注文される点にあります。つまり消費者との距離が、さらに近くなるのです。

生鮮食料品のサプライチェインは他の品物と違います。生鮮食料品の宅配の試みはドットコム・ブームの1997年に遡ります。ウェブヴァンというベンチャーがベンチマーク・キャピタル、セコイア・キャピタルなどからの出資を得てこれに挑戦しましたが、上手く行かず、倒産しています。アマゾンの配送センターは必ずしも生鮮食料品を手がけるにあたって競争優位をもたらしません。

そこでアマゾンは高級スーパー、ホールフーズを買収し、じっくり腰を据えてこの分野を攻略する方針を打ち出しました。

ところが生鮮食料品の宅配サービスで、すでに消費者に定着しつつある形態が存在します。それがミールキットのビジネスです。

ミールキットの献立は予め会社側が用意したものなので、ひとつひとつの食材をバラバラに選び、詰め込む非効率が回避できます。

また消費者の側からすると、いちいち注文するわずらわしさから解放されます。兎に角、毎晩、献立をあれこれ考えることから解放されるのは、とても助かります。

食材は予め分量が量られているので無駄が出ないし、わかりやすい手引書があるので何も考えず、ただ手引書に従うだけで美味しい料理を作ることが出来ます。ミールキットで料理を作って(これはイマイチだな)と不満に感じるのは、50回に1回くらいで、あとはバッチリ美味しい料理が失敗することなく完成します。



これは、ある意味、画期的なサービスであり(いままで何故こんな便利なサービスが存在しなかったのだろう?)と思います。一度ミールキットを購入すると、もう馬鹿馬鹿しくてスーパーに足を運ぶのが億劫になります。

ミールキットの業者には最大手ブルー・エプロン(ティッカーシンボル:APRN)の他、欧州系のハロー・フレッシュなど数社がひしめいています。またアマゾンもシアトル地区でミールキットのビジネスを展開中です。

ブルー・エプロンとハロー・フレッシュがサブスクリプション、すなわち定期購読型なのに対し、アマゾンは1回きりの注文が出来るようになっています。

ブルー・エプロンやハロー・フレッシュの場合、野菜を自分で切る必要がありますが、アマゾンのミールキットの場合は、すでに切った状態で送られてきます。

料理の高級感という意味ではブルー・エプロンがいちばん凝っているし、冒険的な食材を必ず混ぜてあり、シェフのまねごとをしたい消費者にアピールしています。

ブルー・エプロンはIPOを控えた2017年夏ごろ、急成長で手狭になったニュージャージー州ジャージー・シティの配送センターから、ニュージャージー州リンデンに新設した配送センターに切り替えました。ところが全自動化したリンデン配送センターがソフトウェアの不調でトラブル続きとなり、それの調整がつき、混乱が収まるまで新規顧客獲得を控えざるを得なくなりました。

そこで同社はマーケティングを絞り込み、配送センターの立て直しに注力しました。先日の決算カンファレンスコールで問題が解決したことが発表されました。

この間、ライバルのハロー・フレッシュはマーケットシェアを伸ばし、ブルー・エプロンに肉薄しています。

しかしハロー・フレッシュは人海戦術で配送センターを運営しており、いずれブルー・エプロンが経験したのと同じ問題に直面することが考えられます。

ブルー・エプロンの第4四半期決算はEPSが予想-25¢に対し-20¢、売上高は予想1.86億ドルに対し1.88億ドル、売上高成長率は前年同期比-13.1%でした。

期中、マーケティングを絞り込んだ関係で顧客数は-15%でした。これはニュージャージー州リンデンに新設した全自動配送センターが上手く作動せず、オペレーションが混乱したためです。

顧客当り売上高は248ドルでした。これは去年同期の245ドルから上昇しました。

2018年第1四半期の売上高は予想2.2億ドルに対し、1.9~2億ドルを見込んでいます。2018年第4四半期までにEBITDAベースで黒字化を目指します。

ミールキットのビジネスは将来、巨大なカテゴリーになると予想されます。ブルー・エプロンはIPO直後に躓いた関係で、現在はPSRで1倍以下という破格の安値で取引されています。

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