新しいZOZOSUITが水玉模様になったことで「なんか未来感が無くなった」と残念がる声が上がっています。

Market Hackはファッション・ブログじゃないし、僕はおじいちゃんなので、水玉模様のZOZOSUITは「ぱっち」にしか見えないのだけど、ここで「王様は裸だ!」と叫んで田端信太郎君から絶交されるよりも、自分の本来の領域である投資の観点からこの問題を考えたいと思います。

まずZOZOSUITは厳密な採寸をするための「手段」であり、それが無料で配布されるということはカスタマーへの「先行投資」です。言い直せば、最初は会社側の経費の「持ち出し」になるということ。

それは「顧客獲得コスト」と捉えることが出来ます。

でもひとたびそうやってカスタマーのサイズを厳密に採寸できれば、そのデータは長期に渡ってその顧客とのリレーションシップの礎(いしずえ)になります。

顧客はZOZOにリピート注文すると思われますし、長期で見ればその顧客のライフタイム・バリュー(生涯価値)は短期の出費を補って余りあるリターンをもたらしてくれるのです。

このようなライフタイムバリューの概念はネット証券やクレジットカードのような金融サービス業では当たり前の発想ですし、最近ではアマゾン・プライムネットフリックススポティファイなども顧客のライフタイムバリューに立脚した事業戦略、資本戦略を展開しています。

そういう難しい言い方でピンと来ないなら、アマゾンのジェフ・ベゾスが機関投資家コミュニティーに対して「利益は忘れろ! 顧客獲得や売上高だけで我々を評価してくれ!」と調教したエピソードが、これに該当すると言い換えればわかってもらえるかもしれません。

つまり:

顧客獲得コスト < ライフタイムバリュー


という構図になっている限り、最初は利益を度外視して顧客を獲得し、マーケットシェアを伸ばしたほうが、後で左団扇になりやすいというわけです。その際、経営者が気を配らなければいけなくなるのはリテンション(顧客離反率)だけ…ということになるのです。

この手のサブスクリプション・モデルは、最近、大流行の兆しを見せています。ソフトウェアの世界では、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)というサービス提供形態が主流になろうとしていますし、洋服ではスティッチフィックス(ティッカーシンボル:SFIX)、ミールキットではブルー・エプロン(ティッカーシンボル:APRN)などがサブスクリプション・モデルを採用しています。

なぜサブスクリプション・モデルがmake senseするのでしょうか?

その理由は、インターネットの普及によります。ネットでは沢山の潜在顧客にリーチすることができます。またリーチするコストが安いです。さらに地域的制約が小さいです。

でも何よりもサブスクリプション・モデルが強いのは、毎回支払するより、月極めにしてしまうと決済の手間が省けるので企業にとってもカスタマーにとってもこちらの方が便利だということです。

最近ではいろんな企業がサブスクリプション・モデルを導入したがっているので、その決済部分だけを代行するズオラ(ティッカーシンボル:ZUO)のようなサービス提供者も現れています。これはオンラインサロンで言えば決済の面倒をみるDMMサロンみたいなものです。

さて、サブスクリプション・モデルでは顧客離反を低く抑えることが必要になります。言い換えれば「満足の提供」です。それが出来るためにはクライアント・ジャーニー(顧客との旅路)が重要になります。たとえば女性の消費者だと結婚し、妊娠したらおなかが大きくなるのでマタニティー服が必要になります。

このように顧客のライフイベントに合せてツボにはまった商品やサービスを提案してゆくことが必要になるのです。それを可能にするのは昔なら紳士服の仕立て屋に備えられた顧客カードであったわけですが、いまはZOZOSUITに代表される「データ」ということになるのです。

マネックス証券


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