このところ中国から資本が海外へ逃避していました。その関係で人民元にはずっと下落圧力がかかっていました。

中国人民銀行はこれまで人民元の下落を傍観してきました。

しかし、今日、ようやく重い腰を上げてテコ入れに乗り出しました。

オフショア翌日物人民元預金レートは下のチャートに見るように急騰しています。

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(出典:ブルームバーグ)

これを受けてオフショア人民元が過去2日間で+1.8%という、2010年以来過去最大の上昇を演じました

このタイミングで中国人民銀行が人民元のテコ入れに乗り出したのは、アメリカの政治カレンダーを考慮した動きだと思われます

まずドナルド・トランプは1月11日にプレス・カンファレンスを行います。このプレス・カンファレンスを、最初の予定を変更して11日に持ってきた直接の理由は、その日、オバマ大統領が最後の演説を行うからです。

オバマのスピーチに自分のプレス・カンファレンスをぶつけることで、現大統領をdisる……そういうなんとも人間が小さい(笑)ことをトランプは企んでいるというわけです。

だからプレス・カンファレンスの内容はあまり重要ではないだろうと今のところ市場関係者は考えています。

でも逆にいえば「最初の100日」に関する、とんでもない材料が飛び出したら、それを予期していなかった市場が荒れるというシナリオも全く無いとは言えないのです。

その次にカレンダー的に重要な日は、もちろん大統領就任式のある1月20日です。

ドナルド・トランプは大統領に就任するとすぐに「中国は為替操作国だと宣言する」と約束しています。また過去には「中国からの輸入品に45%の関税をかける」と脅しています。

これらの方策を実行に移すのは「気違い沙汰」でしょう。

でも最近、一層の昂ぶりを見せている(笑)、「ツイートによる治世(Governing by Tweeting)」をみるにつけ、マジキチな大統領令(EO)が1月20日に繰り出されるリスクも、ぜんぜん無いとは言えないのです。

以前にも説明しましたが大統領令(EO: Executive order)とは、行政府の長として大統領が省庁に対して発する命令を指します。連邦政府の職員は、これに従う必要があります。

大統領令は、議会、つまり立法府の正式な手続きを経て成立した法律ではありません。でも、しばしば同じくらいの拘束力を持ちます。

アメリカではこれまでに1万3千近い大統領令が発令されてきました。

なぜアメリカの大統領はそんな勝手が出来るのか? ということですが、これは合衆国憲法第二条第一章の「執政権(Executive Power)」に規定されています。

それによると大統領令は大統領の一存で勝手に発動できます。

大統領令が既存の法律と矛盾、抵触してしまった場合は議会が現在の法律を改正する、ないしは省庁が大統領令を実行に移す際の厳密な解釈を提示する、などの方法で矛盾を回避します。

大統領が議会の措置に不服な場合、拒否権を発動することが出来ます。その場合、大統領の拒否権を覆すには3分の2の議決が必要です。

歴史的には外交、国防、条約などに関し大統領令が出された場合、議会は沈黙を守るケースが多かったです。なぜなら合衆国憲法はそれらの案件に関し大統領に大きな権限を付与しているからです。

中国人民銀行が(あまりトランプを刺激しないためにも、ここらへんでそろそろ人民元を支えた方が良いぞ)と判断したのは、そういう事情に因るのではないでしょうか?

【関連するリソース】
米国の今後の政治日程と相場のポイント
(動画18:00から視聴してください)


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