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メディアの報じるところによるとミュージック・ストリーミングのスポティファイが新規株式公開(IPO)でモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、アレン&カンパニーの3社を起用することになったそうです。

上場は今年後半から来年前半を目指しています。

スポティファイは以前、ダイレクト・リスティングを検討していると報じられました。しかし上記の3社を起用するということは、結局、ダイレクト・リスティングのアイデアをあきらめ、伝統的な新規株式公開手法を選択することになりそうです。

ダイレクト・リスティングとは、引受証券会社を介さず、直接、自社の株式をニューヨーク証券取引所などに上場する方法を指します。

このやり方の制約として、新規の資金調達は出来ません。その代り経営陣やVCが持っている既存の株式を売るわけです。

これに対して普通のIPOでは引受証券会社が売り出す株式を売り切ることを約束します。そのようなディールを「フリー・アンダーリトン・ディール(fully underwritten deal)」と言います。

言い換えれば、投資銀行はその株式を売り切ることが出来なかった場合、在庫を抱えるリスクを負うのです。

その代り投資銀行はアンダーライティング・フィーを貰います。いろいろな経費を込みのコミッション率(=それをグロス・スプレッドと言います)は7%にも及びます。

金融サービスの世界においては様々な手数料のコストに対し下落プレッシャーが働いていますが、IPOの際のグロス・スプレッドは、頑なに7%という慣習が守られている数少ない分野です。それは投資銀行にとって美味しい案件であり、なぜIPOが強力にプッシュされるかの背景事情がわかると思います。

IPOに際しては幹事証券がロードショウを行います。これはサーカスの興行よろしく世界の金融センターでIPOの紹介の会社説明会を開催することを指します。

ダイレクト・リスティングでは、そのような経費のかかるロードショウは催されません。

そもそもロードショウはその企業に対する認知度を向上させるために行われるため、スポティファイのような誰でも知っている企業の場合、その必要は余り無いという風にも言えるかもしれません。

ダイレクト・リスティングでは幹事証券が誰に何株IPOを割り当てるか? という判断をしません。つまり安定株主工作が無いわけです。このことは上場後の株価の安定にとって不利だという議論もありますが、そのような配慮が、実際、どれだけ上場後の株価の安定に寄与したか? ということについては証明するのが難しいと思います。

最後にダイレクト・リスティングでは、いわゆる「値決め価格」が無いので、上場初日の急騰もありません。売り方と買い方の折り合ったところで、淡々と取引が始まるわけです。