今日ブラジル中銀が予期せぬタイミングで政策金利のSELICレートをこれまでの11%から11.25%に引き上げました。

ブラジル中銀は2013年4月以降、金融引き締めサイクルに入っています。前回利上げがあったのは4月でした。

今回の利上げは景気が強いからではなく、インフレを退治するのが目的です。9月のインフレ率(IPCA)は6.75%でした。

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事実、ブラジル経済は殆ど成長していません。

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つまり「経済ゼロ成長下でのインフレ」という、スタグフレーションが起こっているわけです。

先の大統領選挙でルセフ大統領が再選されたことと、今回の利上げは、無関係ではないと思います。

世界の投資家は「またルセフか」とウンザリしています。ブラジルからお金を引いているのです。レアル安は、輸入物価を押し上げます。すると通貨安がインフレを招き、利上げが景気を一層悪くするという、悪循環になるわけです。

これに追い打ちをかけるように原油市況は軟化しています。原油価格が低迷すると、今、莫大な先行投資をしているリオデジャネイロ沖の大深水油田の採算が心配になってきます。

ペトロブラスはこの油田開発のために、喩えて言えば太平洋戦争に投入された連合艦隊を一気に編成するような、気の遠くなるようなスケールの先行投資をしています。同社のバランスシートには1,300億ドルの長期負債が載っています。世界のオイル・メジャーの中では、もちろん最も醜悪なバランスシートです。

同社の時価総額が781億ドルなので、株式時価総額より借り入れの方が遥かに大きく、それは株主よりも銀行や債権者の発言権の方が大きいことを意味します。

そのペトロブラスではプロジェクトを巡って汚職の捜査が入っています。ルセフ政権の中枢までが、この汚職に関与しているのではないか? と言われています。

ペトロブラスの債券に不安が走ったら、ラテン・ファンドは阿鼻叫喚になるのではないでしょうか?