先日、この記事を読んで考えさせられたので、これを書きます。

『ネットで誰かを吊るし上げて叩くと快感が得られる 脳科学者中野信子氏が解説する「シャーデンフロイデ」という感情』

ちょっと長いけれど、その中で展開されている議論を抜粋・引用します。

まず中野信子さんによると、理想主義的要素が強い社会では「暗黙のルール」があり、それに従わない人は「あいつ空気読めないよね」と、バッシングが始まるそうです。

そして誰が社会規範から逸脱しているかを察知する「検出モジュール」として、ヒト社会では、「ねたみ」がその役目を果たしている可能性があります。

シャーデンフロイデ(Schadenfreude)は、ねたみの相手が失敗したときに感じる喜びの感情のことで、いわゆるネットスラングの「メシウマ」というのが一番ぴったりくるそうです。

中野信子さんはなぜバッシング(攻撃)が快感を伴うか? について次のように説明しています。

ヒトの集団ではその構成員たちが自分の持つ時間やおカネや労力をちょっとずつその集団のために使って、集団を維持します。

そのなかに1人、自分はそういう代償を払わないという人が居たら、それはタダ乗りでありこれを放置すると共同体が崩壊します。

ヒトは他の動物や外的から自分たちを守るために共同体で行動せざるを得ないので、それを壊すという行為は、種の保存にとって極めて都合が悪いです。だからこれを「悪」、「好ましからざる者」と感じる機能が発達してゆくことで、共同体を守りやすくなり、種として生き延びるのがより有利になるというわけです。

こうした理想主義的要素の強い社会では、自分が何かを達成する、何かを実現するというよりも、なるべくバッシングを受けないようにするのが生き延びるために最善の戦略になります。

これが、世界的に見たとき、日本の幸福度の低さに反映されているという考え方をするひともいます。

 ■ ■ ■

とまあ以上がこの記事の概略です。

僕が考えた部分というのは(なるほどシャーデンフロイデが共同体の維持にとって必要な感情だということはわかるけど、それが強くなりすぎると、それは共同体の活力そのものを殺いでしまうことにはならないのか?)という点です。

もちろん、「ねたみ」とか「シャーデンフロイデ」とかは誰でも持っている感情であり、それはアメリカにもあります。

でも「みんなと同じことをやれ!」という暗黙のプレッシャーは、日本より遥かに低いです。

アメリカの場合、厳密に言えば、「みんなと同じことをやれ!」という暗黙のプレッシャーは地域によって大きな差があると感じます。

たとえばニューヨークのマンハッタンでは、そういうプレッシャーは、まるっきり存在しません。またシリコンバレーでも存在しません。

しかしThe Deep Southと呼ばれる、ミシシッピ、アラバマ、サウスカロライナなどの地域では、共同体の和を乱す、はみ出し者に対するバッシングは強いです。

これらの地域は綿花栽培のプランテーションがあった地域であり、黒人が奴隷として酷使された土地柄です。そして南北戦争のときは、Confederates(南軍)として「黒人奴隷の私有」を賭けて戦った経緯があります。

こんにち、The Deep Southに住む白人は「レッドネック」と呼ばれ、無知で、勤勉さがなく、頑迷だとして、アメリカ国内でも蔑まれています。

つまり現状維持に対するコミュニティの強制力が強く働き過ぎることにより、そのコミュニティ全体の進歩が遅くなったわけです。

大体、芸術、科学、イノベーションなどは、これまでの「常識」を疑い、その限界を試すことから生まれやすいわけですから、そのバウンダリー(領域)からはみ出そうとする試みをバッシングすれば、新しいものは生まれにくくなります。

シリコンバレーが、「誰が、どこで、何をやっていようが、関知しない」社会であることと、ここが世界のイノベーション・センターになったことは無関係ではないと僕は思います。

すると……

「空気読めよな!」とか、ネットで誰かを叩いて快楽を得ていることが横行している日本社会は、知らず知らずのうちに、The Deep Southのような「後進地域」に成り下がりつつあるのかもしれません。

ニーチェは「シャーデンフロイデはみんなが同じであることを強要する、最も卑屈な感情の発露」としています。

卑屈な社会は、前進しにくいと思うけど、如何?


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