キプロスの銀行セクターが大体的な再編を余儀なくされた経緯についてはMarket Hackでしばしば取り上げてきました。

さて、キプロスにはギリシャ神話の愛と美と性の女神、アプロディーテの名前を冠した天然ガス田があります。推定埋蔵量は5~8兆立方フィート(1,420億~2,270億立方メートル)だと言われています。

この天然ガス田はキプロス沖の第12鉱区に位置しており、イスラエルの巨大天然ガス田、リバイアサンに隣接しています。

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アプロディーテの権益の70%は米国の独立系石油・天然ガス生産会社、ノーブル・エナジー(ティッカー・シンボル:NBL)が所有しています。しかし現在までのところ1回試掘がなされただけです。試掘の結果は上々で、流量は強いため、強気の推定埋蔵量になっていますが、正直なところ、まだ不確実要素が多すぎる印象を受けます。

その第一は、キプロスの天然ガス田の所有権がまだ争われているということです。具体的にはトルコ政府が「アプロディーテはトルコに支配されている北キプロスとの共同所有物であって、今回、金融危機に見舞われた南部のキプロス共和国(ギリシャ系)だけがその領有権を有しているのではないと主張しています。

アプロディーテ天然ガス田はキプロス共和国の必要とする天然ガスよりも多くの産出量が見込まれているため、輸出を視野に入れた開発がなされると思われます。その場合、一番簡単な方法はパイプラインをトルコに引くというものです。しかしトルコとキプロス共和国は仲が悪いので、これはありえないシナリオだと思います。

また欧州やアジアへ輸出しようと思えば、液化天然ガス(LNG)にする必要があります。しかしLNGプラントは60億ドルもの先行投資が必要となります。そんなカネはキプロス政府には、ありません。

経済効率の面からだけ考えれば、いずれLNGプラントを建設する必要が出るイスラエルのリバイアサンと海上のLNGプラントをシェアし、コストを案分比例で負担するという方法が理想でしょう。ただこれも政治的なハードルを超える必要がありそうです。
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