サンディエゴに本社を置くセラドン(ティッカーシンボル:CLDN)は心臓発作など、心拍機能の弱まりの問題を抱える患者に対する遺伝子セラピー、マイディカー(MYDICAR)を研究開発中です。

心臓の機能低下は高齢になると5人にひとりが患う病気であり、具体的には心臓の筋肉が弱くなります。

ちゃんと身体中に血液を送り出すことが出来なくなるので、息切れ感や溺れているような感覚を覚える患者が出ます。そうなると救急車で運ばれなければいけなくなるわけです。

末期の患者は、心臓移植など、高い医療費のかかる治療をしなければいけません。アメリカでは年間に390億ドルもの治療費が発生し、ヘルスケア・コスト発生の原因を作っている大きな分野です。このような末期の患者だけで35万人居ます。

さて、心臓の機能が低下するとSERCA2a(=ザルカ2aと読みます)と呼ばれる酵素が不足します。ザルカ2aは激しい運動をしたときのように、ドクドクと、より沢山の血を身体中に送りださなければいけなくなったとき、自然に酵素の供給が増えて、心臓の筋肉細胞の活動を制御する働きをします。

しかし心臓病患者の多くは、この必須の酵素が不足してしまい、心臓のドクドクした活躍が鈍くなってしまうのです。

心臓病が、ザルカ2a酵素に深く関与しているということは、昔から製薬会社の研究者たちには良く知られていました。問題は必要な時にそれを筋肉細胞に届ける技術が無かったのです。

セラドンは2006年に由緒正しいベンロック・キャピタルが始めたバイオベンチャーで、AAVという良性ウイルスを「運び屋」としてザルカ2aを心臓の筋肉細胞に届ける、遺伝子酵素補給セラピーを編み出したのです。この手法がマイディカー(MYDICAR)です。

いまのところマイディカーは39人というごく少数の患者に対して臨床試験が実施されているだけですが、心臓発作リスクが88%も減少するという、かなり際立った効果が認められています。

同社は株式を公開することでフェイズ2b臨床試験を行うための資金調達をしました。

同薬が承認されるのは、早くても2019年ということで、当分の間は「ストーリー一発」の投機的な銘柄にならざるを得ないと思います。同薬が承認される確率は五分五分以下だと思います。

しかしもし同薬が承認されれば、売上高は100億ドルにもなる可能性があると言われています。同薬のマーケティングは多分、大手製薬会社と組むことになると思いますが、ロイヤリティー収入だけで10億ドルというシナリオを描くアナリストも居ます。

ところで、この分野は大手製薬会社が昔から一生懸命トライしてきて、これまで成功しなかった分野なので、リスクは高いです。「ホームランか、三振か」という博打です。同社の場合、ファイザー、ノバルティス、ジョンソン&ジョンソンが2012年に出資しています。その出資に際して、ちゃんとデュー・デリジェンスをやっていると思うので、製薬会社の目から見ても、やっぱりかなり見込みのあるセラピーなのだと思います。また同社に出資しているベンチャー・キャピタルも、一流どころです。

同社のCEO、クリスティーナ・シーボはアムジェンで「ニューポジェン」の開発に携わったメンバーで、その他にも多くのバイオベンチャーのポジションを歴任しています。

CFOのポール・クリーブランドはアラゴン・ファーマシューティカルズのCFOを務めた経験があり、アラゴンはその後、ジョンソン&ジョンソンに売却されています。クリーブランドはアラゴンに入る前はベンチャー・キャピタルのモーア・ダビダウのゼネラル・パートナーで、その前は投資銀行ハンブレクト&クイスト(現在のJPモルガン)のバンカーでした。

CLDN