今日、アップルが170億ドルという大型の社債発行を敢行しました。

それらは3年債、5年債、10年債、30年債に加えて3年モノと5年モノの変動利付債です。

このうち10年債の利回りは2.415%、30年債の利回りは3.883%でした。ウォールストリート・ジャーナルはこれを見て「トリプルAの、世界で最も安い調達コストで社債を出せる企業だけが許される有利な条件」だと評しています。

さて、この社債の売出し目論見書を見て、僕は(えぐいなぁ)と嘆息をつきました。ジョイント・ブックランナー(主幹事)は、ゴールドマン・サックスとドイツ銀行だけ。

所謂、シ団は、ありません。

つまり大半のウォール街の投資銀行は、このディールからあぶれたわけです。(今頃、ディールに入れなかった投資銀行では怒号が飛んでいるんだろうな……)僕など、すぐ辛かった投資銀行時代の思い出が、頭をよぎる(笑)わけです。

例えば、モルガン・スタンレー。

モルスタはアップルのIPOのときの「トップレフト(最上級=主幹事のポジション)」でした。もう30年以上も前の話ですけどね。

でもシリコンバレー・ファイナンスの雄であるモルスタが、今回のアップルのディールに入れていないのは、社内ではゼッタイ責任問題に発展していると思う(笑)

それからJPモルガン。

こちらは同じくアップルのIPOでジョイント・ブックランナーを務めたH&Qを買収し、しかも債券の引き受けでは常にトップを走っている投資銀行なんだから、こんなに大きなディールで幹事に入れていないのは、ジェイミー・ダイモンはバーベキュー・グリルの上でジュウジュウ焼かれているような思いをしている筈。

なんでこんな証券会社の楽屋落ちネタのようなことをくどくど書くかって?

それは、推奨です、推奨。

今頃、ディールから漏れた証券会社のアップル担当アナリスト、調査部長、引受部長、営業部長らは、経営トップやバンカー(法人営業担当)からぎゅうぎゅうに絞られていると思います。

「うちの手口が……出てないじゃないか!」

というわけです。この手の会議には僕も何度も連座させられたので、針の筵であることは容易に想像がつきます。ましてや今後もアップルは同様の社債による調達をする可能性が強いわけだから、ボヤボヤしていると債券引受リーグテーブルの順位がガラガラ変わってしまうリスクもあります。

わかるかな、この悲壮感……

それに比べれば場でアップルの株をヨイショすることなんて、カンタンよ。