日本の貿易赤字が悪化しています。その原因のひとつは輸入に占める液化天然ガス(LNG)の比率が高まっているからです。

日本は8,700万トンのLNGを輸入しています。六兆円とも言われるその輸入代金は日本の総輸入額の8.5%を占めており、しかもこの部分は急速に膨れ上がっています。

日本はマレーシア(輸入の19%)、オーストラリア(同18%)、カタール(同15%)などからLNGを輸入しています。

これらの国のうち、近年、カタールとの取引の拡大が目立ちます。そこでカタールについて説明します。

2011年の時点の世界の天然ガスの確認埋蔵量はIEAによると7,361兆立方フィートです。このうち12%をカタールが占めています。カタールの天然ガス田はノースフィールドという名前です。ノースフィールドは1971年に発見され、イランのサウスパース天然ガス田と隣接しています。現在の生産のペースで、少なくともあと100年は生産を続けることができると言われています。

カタールは自国に大きな天然ガスの消費市場が無いため、生産した天然ガスを日本などの消費地まで届けなければいけません。このため当初から天然ガスの処理、運搬に関するイノベーションに積極的に取り組んできました。このためLNGやGTL(ガス・ツー・リキッド)の工場を積極的に建設したのです。

カタールのLNGの34%は長期契約で日本や韓国などのアジアに輸出されます。また38%は長期契約で欧州へ輸出されています。残りの26%はスポット市場に供出されますが、福島原発事故以降、日本はスポット市場での重要なバイヤーになっています。
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近年、シェールガスの存在が注目されています。生産高で言えばシェールガスは天然ガス生産高全体の16%に過ぎません。しかしこの比率はだんだん上昇してゆくと見られます。世界で最も大きい天然ガス市場である米国(生産高シェアで世界の20%)で、特に顕著にシェールガスへのシフトが起きています。米国では生産高の46%がシェールガスなどの非伝統的な天然ガスから来ています。2022年までには米国における天然ガスの消費量と生産高が逆転するので、米国は天然ガスのネットベースでの輸出国になると見られています。
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これは当然、カタールの市場を脅かすわけです。

実際、米国での天然ガス市況は低迷しているので、カタールが日本や欧州に出荷している長期契約での価格と、米国内でのスポット価格の間には大きな乖離が生じています。
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ただそこにアービトラージの機会があるからといって、実際には簡単に価格訂正が入らないのが天然ガスという商品の難しさです。なぜなら天然ガスは気体ですから「あっちの方に持って行った方が有利に売れるぞ!」という事で仕向け先を変えるわけには行かないのです。秋刀魚を冷凍貨車に載せて築地に運ぶのとは、わけが違うのです。

だから本格的な価格アービトラージが起こるためには米国での天然ガスの処理・輸出インフラストラクチャが整うのを待たなければいけません。これは準備に10年くらいかかります。(実際、カタールの場合、足掛け20年かけて今日のインフラストラクチャを構築しました)

福島原発事故以降、「日本に天然ガスを売る仕事は、カネになる」という事が業界関係者に再認識されています。ですから米国に限らず、世界のいろいろなところで天然ガスの液化プロジェクトが計画されています。下のリストは福島原発事故が起こる前から計画されていたプロジェクトですが、多くのプロジェクトが既にスタートしていることがわかります。

プルート(オーストラリア) 5.9bcm 2012年5月
アンゴラ(アンゴラ) 7.1bcm 2012年6月
スキクダ(アルジェリア) 6.1bcm 2012年12月
グラッシ・トウリ(アルジェリア) 6.4bcm 2013年
ゴルゴン(オーストラリア) 20.4bcm 2015年
PNG(パプアニューギニア) 9bcm 2015年
クイーンズランド・カーチス(オーストラリア) 11.6bcm 2015年
ドンギ・セノロ(インドネシア) 2.bcm 2014年
グラッドストーン(オーストラリア) 10.6bcm 2016年
オーストラリア・パシフィック(オーストラリア) 6.1bcm 2015年
ウイートストーン(オーストラリア) 12.1bcm 2017年
プレリュード(オーストラリア) 4.9bcm 2017年
イクシス(オーストラリア) 11.4bcm 2018年


ただコスト面ではスケールメリットのあるカタールⅣプロジェクトが有利です。
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なお米国のサビーンパスは既存の施設の手直しなので資本コストが安いです。
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