Market Hack

シリコンバレー

加速するシリコンバレーでの起業

要約
シリコンバレーでの起業のペースは加速しているように思われる
その一方で伝統的なベンチャー・キャピタルによるファンディングは低迷している


シリコンバレーのアントレプレナーやベンチャー・キャピタリストの間で最近よく話題になることは「どうやらここ1~2年の間にシリコンバレーでの起業は加速しているように感じる」ということです。

起業数は州の登記などを調べればすぐわかるのですが、リーマン・ショック以降は数字に大きなディスト―ション(歪曲)があると言われています。なぜなら大企業をレイオフされた失業者が自分でビジネスをはじめるケースが多いからです。

それがフリーランスに毛の生えたようなものなのか、それともれっきとしたベンチャーのスタートアップなのかは統計を見るだけでは判断できないし、実際のところ起業する本人たちにもその試みがどうなってゆくか?というハッキリした見通しがあってやっていることではないと思います。

そんなわけで、これが新しいうねりなのかどうかは、今の段階では判然としません。

でもベンチャー・キャピタリストや著名エンジェル投資家たちは何らかの蠢動を感じているのです

「ひょっとして、もの凄いスケールで起業ブームがもう起きているのでは?」

でも伝統的なデータ・ポイントで起業の活発度を測ろうとするとなかなか実態は掴めません。

たとえばベンチャー・キャピタルによるスタートアップへのファンディングは未だ低迷したままです。

下のグラフはプライベート・エクイティーの資産総額と投資実行額です。
プライベート・エクイティー

(出典:ザシティUK)
プライベート・エクイティーは大別してバイアウト・ファンドとベンチャー・キャピタルに2分できます。大体、比率的には6:4から7:3くらいでしょう。

つまりペンチャー・キャピタルの方がプライベート・エクイティー全体より遥かに小さいけど、運用資産のトレンドや投資実行額のトレンドは上のグラフを大体なぞっていると言えるのです。
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いよいよヤバイことになってきた欧州 その7

歴史的に欧州の失業率は米国の2倍以上でした。

今回のギリシャのストライキの例を見てもわかるように失業率が高い国は景気が悪くなると公的部門での支出を増やせという圧力が国民からかかりやすく、それだけ財政が不健全になるペースが加速します。

ここまでをまとめると欧州連合は次のような弱点を抱えているということです:

1. 輸出競争力の低下
2. 生産性の低下
3. 財政の悪化

さらに欧州は米国のシリコンバレーに代表されるような非連続的な技術革新に基づく経済成長を不得意としています。それは欧州の経済モデルがどちらかといえば銀行融資型のモデルだからという面もあると思います。

バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、インターネットなどの、これからの時代を担う成長分野では欧州のこうした経済モデルは競争力を持ち得ないのです。

またこれまで見てきたような競争力の低下は新しくEUのメンバーを追加することでは解決しない問題でもあります。

このように「ただ惰性で拡大基調を続けてきた」EUの拡大志向の発想が止まったとたんに、いままでずっと抱えてきたけど、敢えて正視しなかった懸案が、いまドッと噴き出しているのです。
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2010年 ここに注目③ シリコンバレー

Netscape_classic_logoアメリカではよく「Netscape moment」という言葉が使われます。つまり「ネットスケープがIPOした瞬間」という意味です。このIPOを契機としてアメリカの投資家のハイテク株に対する考え方が激変し、所謂、ドットコム・ブームがはじまったのです。

2010年は「Netscape moment」の再来になるような注目を浴びるIPOが出て来るでしょう。それは取りも直さずシリコンバレーにブームが戻って来ることを意味します。

ブームの火付け役になるであろうIPOは所謂、ソーシャル・ウェブと呼ばれる会社群の中から出てくる気がします。具体的にはフェイスブック、ツイッター、リンクドインなどの企業です。

でもそれらの企業以外にも注目度の高い企業は幾らでもあります。例えばビデオ・プラットフォームの会社、ブライトコーブやネットワーク機器のカリックス、電気自動車のテスラ・モータースなどです。

2009年は民間企業や個人のこしらえた多額の借金を政府が肩代わりする年でした。このため公的負債は世界的に急増しました。1930年型の大恐慌を未然に防ぐためにはそうせざるを得なかったのです。

今年はすでに「腹いっぱい」になってしまった公的部門の負債をどうやって軽減するかがテーマになります。だから財投という言葉は流行らないと思うし、投資家が忌み嫌う言葉になるという気がします。

なるべくバランスシート・リスクの無い、クリーンで身軽なストーリーが人気を博す筈です。

その観点からすればシリコンバレーのハイテク株は政府の支援とは無縁だし、バランスシートも鉄壁です。

おまけにTwitterやYouTubeを指摘するまでもなく、インターネットのサービスは世界的な需要爆発を経験しています。

単純明快なストーリーではないでしょうか?


勇気を出して試行錯誤の回数を増やさなければ日本は救われない

進化シリコンバレーの話をチョッと書いたらいろいろな人からTwitterで反響を頂きました。ありがとうございます。

中でも僕の目をひいたのはEurosellerさんの「独立→失敗→再就職可能の仕組みがないし、そういう人に資金を出そうという仕組みもない」というコメントです。

そう言われて、これは仕組みの問題なのだということにハッと気がつきました。

若しそういう仕組みが今、日本に無いのなら、大至急それを作る必要があります。

また仕組みが既にあってもうまく作動していないのだとすれば油をさしたり錆びているところをピカピカに磨き上げて、もう一度イノベーションのマシーンが動き出せるように愛情を込めてメンテナンスしてあげるのが我々の仕事なのでは?

兎に角、勇気を出して試行錯誤の回数を増やさなければ日本は救われません。なぜならそもそも何が成功するかは誰にもわからないし、おまけに世界の変化の速度はどんどん速くなっているからです。

世界のリスク・キャピタルはいま凄いペースで中国やインドやブラジルに流れています。彼らの資本調達コストはどんどん廉価になり、世界の投資家は彼らの失敗にはどんどん寛容になっています。

それは中国企業やインド企業がいろいろなことを試すチャンスがふえていることを意味します。また資本のちからにモノを言わせて腕力で日本をねじ伏せてくる時代が遠からず来ることを意味します。

日本人が失敗しないことにばかり心を砕いている間に我々が分け前に預かることのできるパイそのものの大きさはどんどん小さくなっているのです。

パイをどうやって増やすかを考えようとせず、それを如何に公平に分けるかに時間の大半を費やしている姿には少し危機感を覚えます。

錆びついているのは日本のエンジニアの夢ですか?それとも官僚や政治家の頭の方ですか?

日本にもシリコンバレーは出来かかっていた それを潰したのがホリエモン事件だ

「日本にシリコンバレーを作る方法」というブログ記事をたまたま目にしました。

それで少し考え込んでしまいました。

なぜなら僕は日本にもシリコンバレーはもう少しのところで出来かかっていたのではないか?と思ったからです。

渋谷が「ビットバレー」とか呼ばれて、面白いスタート・アップがいろいろ登場した、、、あれは何だったのでしょうか?

思うに日本人はエンジニアの人たちの才能の面でもアイデアの面でもぜんぜん世界標準に比べて負けていません。

でも日本が完全に負けている部分があります。

それは失敗を犯すことに対する寛容な態度の欠如です。

計画的な犯罪でない限り、わざわざ失敗させることを前提にビジネスを始める人間は居ないでしょう。ましてやまじめなエンジニアの人たちは自分の理想や夢を実現したいがためにスタート・アップを始めるケースが多いのだと思います。お金とか云々じゃなくて、兎に角、自分がスゴイと思う製品やサービスを実現したい、それが起業の動機なのです。

これは日本でもアメリカでも同じです。

ただアメリカではそういう起業が失敗したとき、「またがんばろうね」くらいで失敗に対するとがめは少ないし、チャレンジに失敗した人がそれをはずかしく思ったりしなければいけない理由はありません。

ところが日本だと起業に失敗した人は犯罪者同然に扱われます。社会に復帰できないし、家族離散とか、悲惨な目に遭うケースもあるかも知れません。

若し上手くいかなかったときに自分が払う羽目になる代償の大きさを考えた時、ひとは起業を諦めるのだと思います。

しかも少しでも成功して「成り上がり」になろうものなら、社会からねたみ、そねみの目を向けられ、少しでも隙があれば徹底的に糾弾されます。

僕はルール違反を犯した人間を擁護するつもりは全くないし、そもそもホリエモン事件の経緯を良く知らないので見当違いなことを書いているかも知れませんが、あのとき寄ってたかってホリエモンを袋叩きにした日本という社会には少し怖いものを感じたし、順法、違法というタテマエ論以前の、「出る釘は打つ」式の陰湿な社会風土を感じざるを得なかったです。

僕がシリコンバレーの投資銀行、H&Qに勤めていた時、H&Qの創業者のビル・ハンブレクトは:

失敗を恐れてはいけない。きみのクライアント企業が失敗したら、「よかったね、これであなたも失敗してはいけないという心の呪縛から解放されたわけだから、次からは成功できるよ」と励ませ!

と口癖のように言っていたのを思い出します。

失敗者に門戸を開き、温かく迎え入れる、、、ビルはこのことをたんなる掛け声ではなく、自分から率先して実行していました。

たとえばスティーブ・ジョブスです。

ジョブスはアップルの経営がおかしくなったとき、自分の雇ったジョン・スカリーから解任され、アップルから放り出されました。でも「行くところが無くなった」ジョブスをハンブレクトは温かく迎え入れます。

だからスティーブ・ジョブスが「ちょっと近くまで来たから親爺のところへ寄ってみたのさ」といってH&Qのオフィスに遊びに来たらすぐにブラウンバッグ(=サンドイッチを包む茶色の紙袋のこと)・ランチを招集したものです。

つまりジョブスが「浪人」していようが、そんなことはカンケイないのです。


Now that you have actually failed, like countless others, you became FREE to succeed.

ビルのこの言葉を聞いた時、本当のシリコンバレーの強さを垣間見た思いがしました。

編集長プロフィール
hirose_takao広瀬隆雄(Hirose Takao)
米国の投資顧問会社コンテクスチュアル・インベストメンツLLCでマネージング・ディレクターとして活躍中。
Twitter/@hirosetakao
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