ソフトバンクのスプリント(ティッカー・シンボル:S)買収に対して、米国のディッシュ・ネットワーク(ティッカー・シンボル:DISH)が対抗する買収提案をしたことは既に報道されていますが、今日、ソフトバンクがなぜ自分の提示条件の方が勝っているのかに関するプレゼンテーションを行いました。

プレゼンテーションのスライドはここからダウンロードできます。

またプレゼンテーションの動画はここから視聴できます。

孫正義氏の英語はネイティブ・スピーカーのような綺麗な発音ではないけれど、十分に間合いを置いた、沈着冷静、かつ明瞭な説明には説得力があります。

長いプレゼンテーションですので、以下、冒頭部分だけを抄訳しておきます。

【スライド3頁】
「ディッシュ・ネットワークのチャールス・アーガンCEOは「ディッシュのスプリントに対する買収提案($7.00)の方がソフトバンクの提案($6.22)より高いと主張しているが、これは正しくない。それをこれから説明してゆく」
「これは誤解を招きやすい言い方だ。私に言わせれば、この数字は間違っている。(ここでスライドにバツ印が提示される)この主張は完全に間違っているし、不完全だし妄想の世界に過ぎない」
「ディッシュは彼らの提示価格とソフトバンクの提示価格をアップル・ツー・アップル(=同じもの同士)で比較していない」

【スライド4頁】
「ソフトバンクの提示価格はディッシュの提示価格より+21%勝っている」
「ディッシュが$7と主張している彼らの提示価格は、実際は$6.31の価値しか無いんだよ。うちのオファーは$7.65の価値がある」

【スライド5頁】
「これを11箇所に渡って、検証してゆく」
「先ず提示価格のバリューだが、ソフトバンクの提示価格は$7.65、ディッシュは$6.31だ」
「次にタイミングだが、ソフトバンクは2013年7月1日にトランザクションが起こるのに対して、ディッシュのそれは今から1年以上も、待たされる」
「レバレッジはソフトバンクが3.0倍に対してディッシュは5.9倍だ」
「われわれのディールの構造はシンプルだが、ディッシュの提案はごちゃごちゃしている」
「彼らはもともと自分のファイナンシングに苦心しているので、スプリント買収に際しては、スプリントの資産をカタに別個の借金をしようとしている。借金のしわよせが、スプリントに来るわけだ。これは二つのサイロ(穀物貯蔵庫=転じて「別腹」の意味)が隠されているわけだ。合併シナジーを得ようとしているのに、こんなまわりくどい小細工していて良いのか? 実態として、ディッシュのディールでは二つの会社の水が切られており、融資団も二つの別個の貸し手になるんだよ。通信規制の面からも、銀行団の貸付条件の面でも、ディッシュのディールの場合、二つの企業が並行することになるわけだ」
「ソフトバンクは既にスプリント買収のための資金の用立ては完了している。ディッシュの方はまだ融資団の言質を取っていない」
「モバイル事業を運営する実績ではソフトバンクは利益ベースで世界で最も速く成長しているのに対し、ディッシュは経験ゼロですよ」

【スライド6頁】
「シナジーで言えばソフトバンクの場合、資本だけを出すと思っている人が多いけど、それは間違っている。わが社はグローバルなスケールで事業を展開している。いや、携帯事業ではスケールこそが全てであるとすら言える。経営効率を発揮するにはスケールが必要だ。ディッシュの場合、デュー・デリジェンスは全然やってない。スプリントの実態がどうなっているのか…それに対する理解はゼロだよ」
「パートナーリングに関しては、ディッシュは訴訟ばっかり起こしている。彼らのこの面での実績は黒歴史そのものだね」
「チャールス・アーガンCEOは85%の投票権を牛耳ろうとしている。これでガバナンスが良いと言えるだろうか?」
「税金面でも我々は効率的だ」
「周波数帯域の面でもスプリントとソフトバンクは良いコンビネーションだ」

【スライド8頁】
「我々のオファーではソフトバンクが80億ドルのキャッシュを投資する。内訳的には31億ドルの転換社債と49億ドルの新株の購入から成っている。つまり80億ドルのニューマネーがスプリントが新しく本業に投入できる資本として注入されるわけだ」
「ディッシュの場合、スプリントが受け取るフレッシュな資本金はゼロだよ」

【スライド9頁】
「シナジー前のソフトバンクの提示価格は$6.38だ。ところでディッシュの提示価格には統合シナジー分もすでに含んでいる点に気を付けて欲しい。ディッシュの提案の$7.00というのは、正しくない。なぜならディッシュ株主の蒙る金融コストからくるダイリューション(株主権利の希釈化)が25¢分あるからだ」

【スライド12頁】
「するとディッシュのオファーは$7.00ではなく$6.75ということになる。しかし、これでもまだダメだ。なぜならスプリントがソフトバンクとのディールを反故にすると、6億ドルのブレイクアップ・フィー(違約課徴金)がかかるからだ。これにトランザクションにかかる経費を足すと9¢になる」

【スライド14頁】
「さらに1年間のタイムバリューのディスカウントを考慮しないといけない。これが61¢分になる」

【スライド15頁】
「スプリントはいまアグレッシブにネットワークを構築しており、LTEへの投資は、待てない」

【スライド16頁】
「だからディッシュのオファーは$6.05の価値しかないんだよ」

【スライド17頁】
「若し、シナジー前同士の数字を比較するならば、ソフトバンクの$6.38に対してディッシュの提示価格は$6.05、つまりソフトバンクの提案の方が+5%勝っている」


以下省略

【Q&Aの聞きどころ 53:40】
ロイターの記者が米国政府のサイバーセキュリティに関する懸念がソフトバンクのディールに与える影響について質問しています。

孫氏は米国政府が懸念を抱くベンダー(=中国のネットワーク機器メーカーのこと)は使わないし、既にクリアワイヤで稼働している中国製のネットワーク機器も取り外すと明言しました。



PS スライド37頁が秀逸だなぁ。