iStock_000008207582Medium【投資のしやすさ(流動性)について】

投資対象を選定する際、機関投資家が重視するのは「投資のしやすさ」です。つまり出たり、入ったりしやすいか?という問題です。

これに対して個人投資家はこの問題を軽視する傾向がありますが、それはたいへん危険な態度です。

例で説明します。ベトナムはつい数年前まで一度株式投資のお金を日本から送金したら、どんなにお金が必要になっても一年間は持ち出せないというきまりがありました。

「いいじゃないか、みんな余裕資金でベトナム株に投資しているのだから」

そういう声が聞こえてきそうですね。

確かにそうかも知れません。でもそもそも中央銀行がそういう国際間の資本移動に関する制約を設けているということは、国内の資本市場の規模そのものが小さいとか、決済システムが未発達ないしは脆弱であるとか、ホットマネーが流入すると国内市場がキリキリ舞いしやすいなどの、諸々の事情があるからこそ、そういう制度になっているのです。

これは子供の自転車乗りの際、補助輪をつけて練習しているような状態です。国際間の資本移動に関する制約があるということは補助輪があるのと同じなので、転倒などの事故を防ぐ効果があります。でも逆に言えば自転車に乗りなれた子供にとっては補助輪は邪魔でしょうがないわけです。

また補助輪アリから補助輪ナシにしたときが一番危ないです。

なぜなら怒涛のような外国からの投機資金の流入を水際で食い止める術がなくなるわけですから、お金は突然、どんどん入ってきます。そうなれば株や不動産が騰がるのは当たり前。

でも身の丈以上に背伸びしたマーケットはいずれ崩れます。そうなった場合、潮が引くように流れ出してしまう外国資本をそのまま換金に応じていたら外貨準備は払底してしまいます。

つまり去年ベトナムで起きたベア・マーケットは上に説明したような、古典的、かつ教科書通りのドタバタ劇だったわけ。

新興国投資に慣れてくると未発達の市場に先回りして投資ポジションをこしらえておき、「補助輪が外れるのを待つ」という手法がオイシイのに気づきます。実際、このやり方はとんでもないリターンをもたらす場合もあります。

でもこのアプローチは極めてリスキーなやり方で、とても万人に薦められるような投資手法ではありません。また、金融機関同士の決済に関する特別な知識が無ければ、どんなに現地に出向いて投資先の企業や不動産物件などを見て回っても、お金が出せなくなったら「万事休す」なのです。

乱暴な言い方をすれば、流動性とその投資対象の値動きの激しさはトレード・オフの関係にあります。だから比較的流動性の低い市場(例えばベトナムや中東市場)では大儲けするのも「あっ」という間ですけど、すってんてんに逆戻りするのも、もっと早いです。