今日サンフランシスコの「ワールド・アフェアーズ・カウンシル」でUCバークレーのバリー・アイケングリーン教授のレクチャーを聞きました。

バリー・アイケングリーンの通貨危機研究はボリュームの面でも質の面でも圧倒的であり、グローバル・マクロのヘッジファンド・マネージャーがよく参考にしています。

アイケングリーンは第二次大戦以降、ドイツ、日本をはじめとして最近では中国やその他の新興国もどんどん台頭してきたことから、こと実際の貿易という観点からは昔のように米国が圧倒的な存在では無くなっていると指摘しました。(これは僕の試算ですが、世界の輸入・輸出のグロス・バリューの大体13~15%が米国だと思います。)

ところが世界の中央銀行が外貨準備を積み上げる際にどの通貨で備蓄するか?ということになるとまだまだ米ドルの人気は衰えておらず、61%が米ドルとなっています。

いまタイランドや韓国の輸出のうちアメリカ向けは2割程度ですが、それにもかかわらず請求書(インボイス)の8割以上はドル建て決済となっています。

つまりここ数十年の間での貿易の世界での米国の地盤沈下にもかかわらず、米ドルの基軸通貨としての地位は殆ど変っていないのです。

これについては貿易実務の担当者がいろいろな通貨による決済作業を覚える煩雑さに比べればまだまだドルを使う利便性の方がそのデメリットより勝っている点をアイケングリーンは指摘しています。

また、「取引相手がドル建てを使うから、、、自分もドル建てにしよう」という皆に合わせるビヘイビア(=これをネットワーク外部性といいます)も見逃せないとしています。

しかしゆくゆくは貿易の実勢に合わせる格好でドルによる外貨準備の比率は次第に低下し、所謂、マルチポーラー(多極的)通貨レジームが到来するというのがアイケングリーンの考え方です。

そこではユーロないしは人民元が米ドルを完全に駆逐するのではなく、3つ程度の通貨がどれも活発に使用され、また外貨準備にも使われるという世界が想定されます。
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