よく「外国株投資は難しいですか?」と質問されます。
これに対する最も親切な回答は「それはアナタがどういう人か、言いかえればライフスタイルによるでしょうね」というものです。
説明します。
今から20年近く昔の話ですが僕がニューヨークのSGウォーバーグに勤めていた時、東京の外国株式部長から電話をもらいました。
部長:「次のアメリカ株営業マンの人選だけど、、、実はある女性を考えている」
僕:「何ですか、急に改まって?」
部長:「即戦力にならなくても、いい?」
僕:「というと?」
部長:「ほら、受渡部にいるだろ、Yちゃんって娘が。彼女を営業部に引っ張ったら、どうだろう?」
当時の外国株式部長はいわゆるピープル・スキル、つまり人を見る目があり、チームをリードし、組織ぐるみで端正なサービスを顧客に提供する能力に極めて長けた人で、早い話が人望の厚い部長でした。その彼の人選に僕がNOと言う筈はありません。
僕:「わかりました。要するに使えるようになるまで仕込めばいいわけですね?」
部長:「ひとつ頼むよ。」
■ ■ ■
ケネディー空港に降り立ったYちゃんは華のあるきれいな女性で、ひとに対する接し方も礼節のある、ひとことで言えば営業向きのお嬢さんでした。でも高給に惹かれて群がって来るハーバードや東大出のエリートとはチョッと違います。学校は横浜のフェリス女学院です。
当時のSGウォーバーグはマンハッタンの7番街と51丁目に新築されたエクイタブル・タワーに入っていました。これから短期間のうちにアメリカの外務員試験であるシリーズ・セブンを受験して、しかもアメリカ株の勉強をしなければいけないので、時間がありません。
(職住接近の方がいいだろう)
そう考えた僕はオフィスの真向かいのザ・ミケランジェロ・ホテルのレジデンスを彼女の住まいに決めました。会社のビルを出て、自宅のあるホテルまで、歩いて5歩です。これなら強盗に遭う心配もありません。小さなステュディオですが、窓越しには『キャッツ』を上演しているブロードウェイのウインター・ガーデン・シアターが見えていたと思います。
平日は会社でアメリカ株の勉強をして、週末は近くのニューヨーク近代美術館のカフェにシリーズ・セブンの教則本を携えてゆき、近代美術館の中庭を見ながら勉強するわけです。
そうやって勉強漬けの日々が始まったのですが、数ヶ月経って異変が出ました。
Yちゃんが思い詰めた表情で「相談があります」と言ってきたのです。
「朝会を聞いていてもアナリストの言っていることはぜんぜん聞き取れないし、会計のことも、企業のこともわかりません。私なんかに本当に営業が出来るんでしょうか?」
移動するタクシーの中でYちゃんはとうとうシクシク泣き始めました。
(や、やばい)
そうするうちに僕はニューヨークの営業本部長の秘書をつとめるフランシスから呼び出されました。
フランシス:「アンタ、ちょっとこっちに来なさい」
僕:「なんでしょう?」
フランシス:「あなたいじめてるでしょう?Yちゃんのこと」
僕:「えーっ、いじめて無いってば」
フランシス:「承知しないからね、彼女を泣かせたら」
僕:「ご、誤解だよ。それに彼女はいま、肝心なところ(make or break moment)にさしかかっているんだ。」
これには僕も弱りました。
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これに対する最も親切な回答は「それはアナタがどういう人か、言いかえればライフスタイルによるでしょうね」というものです。
説明します。
今から20年近く昔の話ですが僕がニューヨークのSGウォーバーグに勤めていた時、東京の外国株式部長から電話をもらいました。
部長:「次のアメリカ株営業マンの人選だけど、、、実はある女性を考えている」
僕:「何ですか、急に改まって?」
部長:「即戦力にならなくても、いい?」
僕:「というと?」
部長:「ほら、受渡部にいるだろ、Yちゃんって娘が。彼女を営業部に引っ張ったら、どうだろう?」
当時の外国株式部長はいわゆるピープル・スキル、つまり人を見る目があり、チームをリードし、組織ぐるみで端正なサービスを顧客に提供する能力に極めて長けた人で、早い話が人望の厚い部長でした。その彼の人選に僕がNOと言う筈はありません。
僕:「わかりました。要するに使えるようになるまで仕込めばいいわけですね?」
部長:「ひとつ頼むよ。」
■ ■ ■
ケネディー空港に降り立ったYちゃんは華のあるきれいな女性で、ひとに対する接し方も礼節のある、ひとことで言えば営業向きのお嬢さんでした。でも高給に惹かれて群がって来るハーバードや東大出のエリートとはチョッと違います。学校は横浜のフェリス女学院です。
当時のSGウォーバーグはマンハッタンの7番街と51丁目に新築されたエクイタブル・タワーに入っていました。これから短期間のうちにアメリカの外務員試験であるシリーズ・セブンを受験して、しかもアメリカ株の勉強をしなければいけないので、時間がありません。
(職住接近の方がいいだろう)
そう考えた僕はオフィスの真向かいのザ・ミケランジェロ・ホテルのレジデンスを彼女の住まいに決めました。会社のビルを出て、自宅のあるホテルまで、歩いて5歩です。これなら強盗に遭う心配もありません。小さなステュディオですが、窓越しには『キャッツ』を上演しているブロードウェイのウインター・ガーデン・シアターが見えていたと思います。
平日は会社でアメリカ株の勉強をして、週末は近くのニューヨーク近代美術館のカフェにシリーズ・セブンの教則本を携えてゆき、近代美術館の中庭を見ながら勉強するわけです。
そうやって勉強漬けの日々が始まったのですが、数ヶ月経って異変が出ました。
Yちゃんが思い詰めた表情で「相談があります」と言ってきたのです。
「朝会を聞いていてもアナリストの言っていることはぜんぜん聞き取れないし、会計のことも、企業のこともわかりません。私なんかに本当に営業が出来るんでしょうか?」
移動するタクシーの中でYちゃんはとうとうシクシク泣き始めました。
(や、やばい)
そうするうちに僕はニューヨークの営業本部長の秘書をつとめるフランシスから呼び出されました。
フランシス:「アンタ、ちょっとこっちに来なさい」
僕:「なんでしょう?」
フランシス:「あなたいじめてるでしょう?Yちゃんのこと」
僕:「えーっ、いじめて無いってば」
フランシス:「承知しないからね、彼女を泣かせたら」
僕:「ご、誤解だよ。それに彼女はいま、肝心なところ(make or break moment)にさしかかっているんだ。」
これには僕も弱りました。
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