現在、エヌビディアは時価総額4.5兆ドル(約675兆円)を誇る世界で最も価値のある企業として君臨しており、パランティア・テクノロジーズの4000億ドルと合わせると、その評価額は4.9兆ドルに達する。しかし、2028年までにはアマゾンとアルファベット(グーグル)の2社がこの数字を上回る可能性があるとの見方が強まっている。両社が時価総額5兆ドルの壁を突破するために何が必要か、そしてその背後で進行する半導体市場の競争激化について詳述する。
5兆ドルクラブへの道筋
アマゾンの現在の時価総額は2.6兆ドルであり、5兆ドルに到達するには株価が約92%上昇する必要がある。これは今後3年間で年率24%のリターンを達成することを意味する。一方、アルファベットの時価総額は3.9兆ドルで、目標達成には約28%の上昇、つまり年率9%のリターンが必要となる。両社ともに、この野心的な目標を達成するための強力な成長ドライバーを有している。
アマゾンの全方位AI戦略
アマゾンは、小売Eコマース、デジタル広告、クラウドコンピューティングという中核3事業すべてに人工知能(AI)製品とツールを展開しており、これが収益の増加だけでなく収益性の向上にも寄与している。実際、生成AIツールによる小売事業の効率化などが奏功し、過去1年で非GAAPベースの営業利益率は2ポイント近く上昇した。
ガートナーのデータによれば、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)はクラウドインフラ市場で41%のシェアを握り、圧倒的な支配力を維持している。アンディ・ジャシーCEOが「企業のデータとワークロードの大部分はAWS上にあり、多くの企業がAWS上でAIを稼働させたいと考えている」と語る通り、AI需要の恩恵を受け、第3四半期のクラウド収益の伸びは20%に加速した。
将来の展望も明るい。調査会社各社の予測によると、2030年までに小売Eコマースは年率10%、アドテク支出は年率14%、クラウドサービス支出は年率22%で成長すると見込まれている。ウォール街のコンセンサスでは、今後3年間の利益成長率は年率19%と予測されているが、過去6四半期でアマゾンは予想を平均23%上回る実績を残している。この傾向が続けば、2028年後半にはPER(株価収益率)が33倍まで低下しつつ、時価総額5兆ドルを達成するシナリオも現実味を帯びてくる。さらに、自動運転子会社Zooxがラスベガスでライドシェアサービスを開始するなど、中核事業以外での成功が市場評価をさらに押し上げる可能性もある。
アルファベットの堅実なAI統合
アルファベット傘下のグーグルは、検索エンジンやYouTubeを通じて膨大なデータを収集し、ユーザーを惹きつける能力において世界最大のアドテク企業であることに変わりはない。ChatGPTのような生成AIツールの台頭により検索市場の景色は変わりつつあるが、同社はGeminiモデルを搭載した「AIオーバービュー」や「AIモード」などの新機能で迅速に対応している。
フィナンシャル・タイムズ紙が「グーグルの新しい広告機能は、チャットボットを通じて割引コードの提供など高度にパーソナライズされた広告を可能にし、AIライバルたちの一歩先を行く」と評するように、AIを活用した広告ツールの導入も進んでいる。また、クラウドインフラ市場でもシェアを拡大しており、フォレスター・リサーチからはAIインフラのリーダーとして評価されている。カスタムAIチップやGeminiモデルによる差別化が、今後の成長を牽引することになるだろう。
マイクロソフト「Maia 200」が突きつける脅威
こうした巨大プラットフォーマーの成長の裏で、AIチップ市場の王者エヌビディアに対する包囲網も狭まりつつある。マイクロソフトは最近、Azure内での高性能な推論ワークロード向けに構築された自社製AIアクセラレータ「Maia 200」を発表した。これは、エヌビディアのGPUに依存していたAI計算処理の一部を代替する動きであり、投資家の注目を集めている。
マイクロソフトは公式ブログで、Maia 200を「AIトークン生成の経済性を劇的に改善する画期的な推論アクセラレータ」と位置づけている。特筆すべきは、そのコスト効率とパフォーマンスだ。同社によれば、Maia 200はアマゾンの第3世代Trainiumの3倍のFP4パフォーマンスを持ち、アルファベットの第7世代TPUを超えるFP8パフォーマンスを発揮するという。さらに、現在配備されている最新ハードウェアと比較しても、1ドルあたりのパフォーマンスが30%優れていると主張している。
エヌビディアの優位性とリスク
もちろん、この新チップが直ちにエヌビディアの牙城を崩すわけではない。Maia 200は主にマイクロソフト自身のクラウド効率化のために使用されるものであり、エヌビディアへの依存度を低下させる可能性はあるものの、完全に置き換えるものではないからだ。
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、ASIC(特定用途向け集積回路)のようなカスタムチップに対し、エヌビディアのプラットフォームの強みはその多様性と回復力にあると強調する。多くの開発者がエヌビディアのソフトウェアスタックを基盤に構築を行っており、このエコシステムを単一の自社製チップで複製することは極めて困難だ。実際、2026年度第3四半期の売上高は前年同期比62%増の570億ドルに達しており、成長の鈍化は見られない。
しかし、投資家にとって懸念材料がないわけではない。現在、エヌビディアの株価はPER46倍前後で取引されており、これは非常に高い評価である。マイクロソフト、アルファベット、アマゾンといった資金力のあるハイパースケーラーが、徐々に自社製技術への移行を進めれば、エヌビディアの価格決定力はじわじわと削がれていく可能性がある。Maia 200のような代替手段の台頭は、エヌビディアの独占的な地位に対する長期的なリスク要因として無視できないものになりつつある。