BLACKPINKのリサやデビッド・ベッカムら錚々たるセレブにも愛され、2024年のアジア市場に一大旋風を巻き起こしたキャラクター「ラブブ(Labubu)」。このフィギュアを巡る異常な熱狂が今、静かに冷え込み始めている。製造元である中国の玩具メーカー、泡泡瑪特(ポップマート・インターナショナル・グループ)の株価は今年に入って4倍以上に跳ね上がり、年初来で180%超の急騰を演じてきた。今月にはハンセン指数とハンセン中国企業指数へのダブル採用も果たしたばかりのトップ銘柄だが、ここに来て世界最大級と騒がれた株高ラリーに終止符が打たれる気配が濃厚だ。事実、8月26日に付けた最高値からはすでに約130億ドル(約1兆9200億円)、実に時価総額の約4分の1が吹き飛んでいる。
「完璧に織り込まれた」株価の脆さ
香港市場で10月15日、同社株が一時約9%急落し、4月以来の大幅な下げを記録した背景には、機関投資家のシビアな見立てがある。JPモルガン・チェースのケビン・イン氏らアナリスト陣は、株価を押し上げる「材料不足」と、もはや魅力に欠けるバリュエーションを理由に、同社への投資判断を「オーバーウエート」から「ニュートラル」へ引き下げた。2026年12月期の目標株価も25%カットし、300香港ドルに設定している。彼らのレポートは、現在の株価が「完璧な状態を前提に織り込まれてしまっている」と容赦がない。ほんのわずかな業績の下振れや、サードパーティへのライセンス供与に関するネガティブな報道、そして何より転売市場での価格下落が、そのまま強烈な売り圧になり得るというのだ。現実として、中国国内の二次流通市場では、かつてラブブが誇っていた異常なプレミアム価格はすでに剥落しつつある。
海外成長エンジンにかかった急ブレーキ
株式市場の動揺やアジア圏でのブーム沈静化と時を同じくして、同社の次なる成長エンジンと目されていた海外展開にも深い亀裂が走り始めている。特に米国市場での失速は深刻な課題だ。クレジットカードやデビットカードの決済データをトラッキングするブルームバーグ・セカンドメジャーによれば、米国の3月の売上高は前年同月比で45%もの大幅な落ち込みを記録した。1月には130%増、2月には41%増と順調に数字を伸ばしていただけに、この反落のインパクトは計り知れない。「ポスト・ラブブ」を担う次なるヒット作を見つけ出せない同社の苦悩が、海外での実需の後退という形で露骨に表れ始めたと言える。
迫られる次の一手
現在、同社株は12カ月先の予想利益に基づく株価収益率(PER)で約23倍にて取引されている。もちろん、ポップマート側もただ手をこまねいているわけではない。クリスマス商戦に向けてアニメーション作品の展開やラブブの新作、さらにはインタラクティブ玩具の投入といった矢継ぎ早の施策を控えている。しかしJPモルガンが指摘するように、これらが株価を再び押し上げる「材料としての見通しは不透明」なのが実情だ。単一のメガヒットキャラクターへの依存から脱却し、再び市場の熱狂を呼び起こせるのか。それとも、かつて栄華を極めた数多くのコレクショントイと同じ道を辿るのか。数字と市場が突きつけるこの重い問いに対し、確固たる答えが出るのはまだ先になりそうだ。