テスラが水曜日に発表した第3四半期(7~9月期)決算は、売上高が前年同期比12%増と2四半期続いた減収から回復したものの、調整後1株当たり利益(EPS)が市場予想を下回りました。イーロン・マスクCEOが決算説明会で電気自動車(EV)の需要動向や第4四半期の見通しに関する具体的なガイダンス(業績見通し)を示さなかったことが嫌気され、同社株は時間外取引で5%近く下落しました。
第3四半期業績:増収も利益は37%減
第3四半期の総売上高は281億ドルとなり、LSEGがまとめたアナリスト予想の263億7000万ドルを上回りました。前年同期の251億8000万ドルからの増収となります。自動車部門の売上高は、前年同期の200億ドルから6%増の212億ドルでした。
しかし、純利益は前年同期の21億7000万ドル(1株当たり62セント)から37%減少し、13億7000万ドル(同39セント)となりました。調整後EPSは50セントで、市場予想の54セントには届きませんでした。この大幅な減益は、EVの値下げや、人工知能(AI)および「その他のR&Dプロジェクト」に関連する営業費用が50%増加したことなどが要因です。
また、自動車関連の規制クレジットによる収益も、前年同期の7億3900万ドルから44%減の4億1700万ドルに落ち込みました。
ガイダンス欠如に市場は失望
株価下落の主な要因は、投資家が最も知りたがっていた情報がマスクCEOから提供されなかったことです。
特に、ドナルド・トランプ大統領の歳出法案によって廃止され、第3四半期末に失効した連邦政府のEV税額控除が、今後の需要にどう影響するかについての言及はありませんでした。また、サイバートラックの動向や自動車部品への関税の影響、第4四半期の見通しについても具体的な指針は示されませんでした。
テスラの第3四半期の納車台数は49万7099台と過去最高を記録しましたが、年初来の累計納車台数は約120万台で、2024年の同時期と比較すると約6%減少しています。欧州ではマスク氏の政治的発言への反発や、フォルクスワーゲン(VW)やBYDといった競合他社との競争激化により、販売不振が続いています。
ブランド力にも陰りが見え、インターブランドが今月初めに発表した2025年版「ベスト・グローバル・ブランド」ランキングでは、テスラの順位が2024年の12位から25位へと大きく後退しました。
未来構想①:ロボタクシーへの期待
マスクCEOは、予想を下回った売上総利益率や利益よりも、ロボタクシーや人型ロボットといった未来的なビジョンを語ることに時間を割きました。
同氏は、テスラが保有する数百万台の車両がソフトウェア・アップデートによって完全自動運転(FSD)車となり、「人々はこれがどれほどの規模で普及するかを理解していない。正直なところ、衝撃波のようになるだろう」と述べました。
しかし、アルファベット傘下のWaymoや中国の百度(バイドゥ)の「Apollo Go」が商用ロボタクシーサービスを積極的に新市場で展開しているのに対し、テスラの取り組みは一部のパイロットプロジェクトに限定されています。マスク氏は7月の決算説明会で「年内にも米国人口の半分」が自動運転ライドヘイリングを利用可能になると予測していましたが、テスラ車は依然として人間の運転手が常に注意を払う必要があります。
今回、マスク氏は「年内にオースティンで運転手なしのロボタクシーサービスを運営する」とし、2025年末までに(少なくとも安全運転手同乗の上で)8~10都市で運行するとの見通しを示しました。
一方で、現状のFSD(FSD Supervised)の導入率は低いままです。Vaibhav Taneja最高財務責任者(CFO)は、このシステムの有料顧客ベースは「依然として小さい」と述べ、テスラの現行フリートの12%に過ぎないことを明らかにしました。FSDによる収益も前年同期の3億2600万ドルを下回り、総収益に占める割合は2%未満でした。
未来構想②:「外科医」ロボットと報酬問題
ロボタクシーに続き、マスク氏は開発中の二足歩行ロボット「オプティマス」について、「史上最大の製品になる可能性」を秘めていると改めて強調しました。
同氏は今回、「オプティマスは信じられないほどの外科医になるだろう」と発言。自動運転とオプティマスを組み合わせることで、「貧困のない世界、誰もが最高の医療を受けられる世界」を創造できる、とまで踏み込みました。オプティマスの新バージョン「V3」は2026年第1四半期にデモが行われる可能性があるとしています。
マスク氏はさらに、この「ロボット軍団」の構想を、自身の新たな報酬パッケージ問題と結びつけました。テスラは9月、マスク氏に最大1兆ドルの価値をもたらし、同氏の持ち株比率を12%増加させる可能性のある新報酬プランを発表しており、11月上旬の年次株主総会で採決されます。
マスク氏は「もし私がこのロボット軍団を作るなら、少なくともその軍団に対して強い影響力を持つ必要がある」と述べ、報酬プランへの支持を暗に求めました。同氏はまた、このプランに反対を推奨している議決権行使助言会社のISSとGlass Lewisを「何もわかっていない」「企業テロリストだ」と激しく非難しました。
「Semi」など既存計画は遅延か
テスラは「サイバーキャブ」、重量級電動トラック「Semi」、新型蓄電池「Megapack 3」について、2026年の「量産」開始を目指す方針を改めて示しました。
しかし、2017年に発表された「Semi」に関しては、生産ラインが依然として「建設中」であり、一部の機器の設置が続いている段階です。Lars Moravy副社長は、検証用トラックのフリートが公道を走行していると述べましたが、Semi向けの自動運転システムの開発もまだ続いていることを認めました。
投資家が求める短期的な消費者心理の回復策や、中核事業である自動車販売に関する明確な戦略が示されないまま、マスク氏の壮大な未来構想が再び強調される決算説明会となりました。