現在のナスダック市場を見渡すと、AIやテック銘柄の熱狂が至る所で確認できる。たとえば、直近のアップラビン(APP:US)の動きなどはまさにその象徴と言えるだろう。株価は前日の485.16ドルから窓を開けて479.99ドルで始まり、一時は504.98ドルの高値をつけて最終的に501.00ドル(+3.26%)で引けた。PER42.88倍、PBR71.29倍、PSR27.48倍という非常に強気なバリュエーションにもかかわらず、時価総額は約1,683億ドルまで膨れ上がっている。1年間のトータルリターンは38.27%を記録し、EPSが11.68ドルで推移する中、1日の平均出来高が460万株を超えるこの銘柄は、いまの市場の強烈なモメンタムを如実に物語っている。
しかし、すでに火がついて高値圏にある銘柄を追いかけるのではなく、まだ市場の熱狂に巻き込まれていない次の「本命」を底値で拾う手法こそ、投資の醍醐味ではないだろうか。
今年の後半、AI業界の台風の目であるAnthropic(アンソロピック)がナスダック、あるいはNYSEに上場する可能性がある。もしこのIPOが実現すれば、その評価額は優に1兆ドルを超える歴史的な超大型案件になる公算が大きい。イギリスの投資家をはじめ、世界中がこの巨象の上場を待ち構えているわけだが、実は今日この瞬間、100ドル未満の資金で実質的にこの未上場のAI企業へアクセスできる抜け道が存在する。
その鍵を握るのが、お馴染みのビデオ会議プラットフォームを展開するZoom(NASDAQ: ZM)だ。時計の針を2023年5月に戻そう。同社の投資部門であるZoom Venturesは、当時まだ評価額が45億ドル程度だったAnthropicに出資を行った。具体的な条件はプレスリリースで伏せられていたものの、アナリストたちの推計によれば、その初期投資額はおよそ5,100万ドル規模だったとされている。そして驚くべきことに、現在のAnthropicの評価額は9,000億ドルにまで急激な成長を遂げた。信じがたいかもしれないが、Zoomの持ち分がそのまま維持されていると仮定すれば、その価値は約200倍に膨れ上がり、かつての5,100万ドルはいまや約102億ドルの大化けを果たしている計算になる。
ここで市場の歪みとも言える面白い現象が起きている。現在のZoom自体の時価総額はおよそ290億ドルに過ぎない。つまり、Zoomの企業価値の約35%がAnthropicの持分だけで説明できてしまうのだ。仮にあなたが今の株価(100ドル弱)でZoom株に1万ポンドを投じたとすれば、実質的にそのうちの約3,500ポンドを直接Anthropicに投資しているのと同じ意味を持つことになる。
もちろん、Zoomの魅力は単なる「Anthropicの財布」にとどまらない。パンデミック時の特需による反動減や、Microsoft Teams、Google Meetといった巨人たちとの熾烈なシェア争いに晒されながらも、同社の売上高は過去5年間、毎年着実に成長を続けている。今年1月末に締めた昨年度の業績を見ても、売上は48億6,900万ドルに達した。特筆すべきは、収益の約6割をエンタープライズ(大企業)顧客が占めている点だ。個人客よりもはるかに解約率が低く安定した大口の顧客基盤が、同社の強固な財務体質と盤石なバランスシートを裏打ちしている。
これだけの好材料が揃っていながら、バリュエーションは拍子抜けするほど割安に放置されている。今期の予想収益に基づくフォワードPERはわずか17倍だ。つまり投資家は、Anthropicへのエクスポージャーを獲得するにあたって、法外なプレミアムを支払う必要が一切ない。世間のハイプ(過熱感)から外れたところで、誰にも騒がれず静かに、しかし確実に上昇のエネルギーを蓄積しているこの銘柄には、今後本格的な再評価(リレーティング)に向かう十分な余地が残されている。