米ソフトウエア大手オラクル(Oracle)の株価が月曜朝、一時3%高と急伸した。きっかけとなったのは、動画投稿アプリTikTokのショウ・チュウ最高経営責任者(CEO)が従業員向けに送った内部メモの存在だ。このメモによって、長らく懸案であったTikTokの米国事業に関する取引が完了したことが公式に確認されたためである。
TikTok新体制と株式市場の反応
ビジネス・インサイダーが報じたところによると、チュウCEOのメモには「トランプ大統領が2025年9月25日に署名した大統領令に基づき、TikTok USDS Joint Venture LLCが設立された」と明記されている。この新会社は米国資本が過半数を握る体制となり、オラクルはプライベート・エクイティのシルバーレイク、およびアブダビの投資会社MGXとともに、TikTok米国事業の45%を共同保有することになる。
バイトダンス(ByteDance)の影響力を懸念する声に対し、非中国資本の比率は計80%に達し、バイトダンスの子会社に残されるのは20%のみとなる。また、新ジョイントベンチャーの運営には、ワーナー・ブラザースなどで経験を積み、TikTokに4年近く在籍しているアダム・プレッサー氏が取締役会によって任命された。データ保護やアルゴリズムの安全性について包括的な対策を講じるとしており、このニュースを受けて市場はオラクルの成長余地に期待を寄せた形だ。
膨張する借金とAIインフラ構想「スターゲート」
しかし、株式市場の楽観的な反応とは裏腹に、債券市場ではオラクルの財務健全性に対する不穏な空気が漂い始めている。オラクルの株価収益率(PER)は33倍、予想成長率は23%と表面上の数字は悪くないように見えるが、同社はすでに1120億ドル(約17兆円)もの純有利子負債を抱えているからだ。
さらに、オラクルは人工知能(AI)分野での覇権を握るべく、オープンAIと共同で総額5000億ドル規模のAIインフラ構想「スターゲート」を推進しており、その一環としてテキサス州とウィスコンシン州でのデータセンター建設に380億ドル(約5兆8000億円)規模の社債発行を準備している。銀行団が主導するこの調達は、AIインフラ関連としては過去最大級となる見込みだ。先月もオラクルは投資適格債市場で今年2番目の大型案件となる180億ドルを調達したばかりであり、矢継ぎ早の資金調達が続いている。
債券市場で高まる警戒レベル
こうした巨額投資に伴い、投資家の間ではオラクルのクレジット(信用)リスクへの警戒感が急速に高まっている。ICEデータ・サービスによると、オラクルの債務不履行(デフォルト)リスクに備えるためのクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率(スプレッド)は、2023年10月以来の高水準付近で推移している。
モルガン・スタンレーのアナリスト、リンゼー・タイラー氏とデービッド・ハンバーガー氏は27日付のリポートで、オラクルの実質純債務残高が2028会計年度までにおよそ2900億ドル(約44兆900億円)にまで膨らむと試算した。これは現在の約3倍に相当する衝撃的な数字だ。両氏は「短期的な信用状態の悪化と先行き不透明感が、債券保有者や貸し手にさらなるヘッジ需要を促す可能性がある」と指摘し、投資家に対してリスク回避の動きを推奨している。
AIブームとTikTok事業の獲得という強力な成長エンジンを手に入れたオラクルだが、それを支えるための「借金の山」が、今後の同社の経営と株価評価に重くのしかかる懸念は拭えない。株式市場が描くバラ色の未来と、債券市場が恐れる財務悪化の現実。オラクルは今、その狭間で極めて大きな賭けに出ていると言えるだろう。