ハイテク株主導の回復と市場の楽観ムード
火曜日の米国株式市場は、連邦準備制度理事会(FRB)による来月の利下げ観測が強まる中、主要3指数がそろって上昇した。特にダウ工業株30種平均は600ドルを超える上げ幅となり、前日比1.4%高で取引を終えている。S&P500種株価指数も0.9%上昇、ナスダック総合株価指数は序盤の下げを跳ね返し0.7%高と、感謝祭の祝日を控えた短縮取引週において堅調な推移を見せた。これにより市場は3日続伸となり、今月の下落分を取り戻す動きが鮮明になっている。
個別銘柄に目を向けると、アップルとアルファベットが最高値を更新するなど、巨大テック企業の復調が相場を牽引した。アルファベットの時価総額は4兆ドルの大台に迫りつつある。一方で、エヌビディアはメタ・プラットフォームズがグーグルのAI半導体採用を数十億ドル規模で検討しているとの報道を受け、3%超の下落となった。AIチップ市場における競争激化への懸念が意識された形だ。
政策転換への期待と経済指標の強弱
市場心理を大きく支えているのは、金融政策の転換への確信だ。FRBのウォラー理数が利下げを支持する姿勢を示唆したことで、市場では12月の会合で0.25ポイントの利下げが行われる確率が80%を超えたと織り込み始めている。
同日に発表された経済指標も、この見方を補強する材料となった。9月の小売売上高は増加したものの予想を下回る伸びにとどまり、卸売物価指数(PPI)は前月比0.3%上昇と市場予想通りではあったが、前年同月比では2.7%の上昇となった。また、決算発表ではコールズやベスト・バイといった小売大手が予想を上回る好業績を発表し、投資家の安心感につながっている。
モルガンSウィルソン氏による長期的な強気シナリオ
足元の相場上昇に加え、長期的な見通しについても極めて強気な意見が出ている。米モルガン・スタンレーのチーフストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は、S&P500種が2026年末までに現在の水準からさらに上昇し、7800ポイント近辺に達するとの見解を示した。これは来年にかけて約16%の上昇を見込むもので、ブルームバーグが調査したストラテジストの中でも際立って強気な予測の一つである。
ウィルソン氏は、AIによる業務効率化や企業の価格決定力の強化、さらには規制緩和や安定した金利水準などが追い風となり、S&P500構成企業の1株当たり利益が今後2年間でそれぞれ17%、12%増加すると分析している。「出遅れていた分野も含め、新たな強気相場と利益成長の局面に突入している」というのが同氏の見立てであり、もし予測通りになれば同指数は4年連続で2桁成長を記録することになる。かつて米国が関税措置を示唆した際にも強気を崩さなかった同氏の姿勢は、現在の市場の底堅さと合致している。
今後のリスク要因と市場スケジュール
もっとも、先行きに全く不安がないわけではない。ウィルソン氏自身、FRBが予想以上にタカ派的な政策を維持した場合、短期的なリスクが生じる可能性について警告している。さらに長期的には、「過熱した」経済が再びインフレ圧力を高めるリスクも指摘されている。投資家はAI関連銘柄の高いバリュエーションや政府閉鎖リスクなどを懸念しつつも、現状では経済成長への信頼を維持しているようだ。なお、米国市場は木曜日の感謝祭に伴い休場となり、金曜日も午後1時までの短縮取引となる予定である。